きっかけは「防災の日」でいい
9月に入ると、テレビやニュースで台風や地震への備えが話題になる機会が増えます。
「実家の防災グッズ、ちゃんとしてる?」という一言は、相続や終活の話とは違い、親を心配する気持ちから自然に出てくる会話です。ちょうど9月1日は「防災の日」。この時期の空気に乗せてしまえば、身構えずに実家の話を切り出すことができます。
家庭の防災、実は7割が「できていない」
株式会社クロス・マーケティングの調査(2026年8月、全国20〜79歳の男女3000名対象)によると、家庭内の防災の備えが「できていない」人は74%。モバイルバッテリーも、所持率は65.8%あるものの、実際に「よく使っている」人は26.0%にとどまり(株式会社メディアシーク調査、2026年8月)、持っているだけで満充電か確認していない、というケースが少なくないようです。
まずはこうした非常食や充電の話から入り、「避難するとき、通帳やお薬手帳などはすぐ持ち出せる?」「大事な書類はどこにまとめてある?」というふうに、持ち出す物の置き場所を確認し合う。
これなら、身構えさせずに実家の中身を一緒に見て回るきっかけになります。
見直しておきたい「医療・介護の資格確認書類」
紙の健康保険証はもう使えません
2026年8月からは従来の紙の健康保険証が使えなくなり、「マイナ保険証」か、それに代わる「資格確認書」で医療機関にかかる仕組みに変わりました。
とくに後期高齢の親世代では、資格確認書が交付されているケースも多くあります。介護保険被保険者証(介護保険証)も合わせて、「医療・介護の資格が分かる書類はどこにまとめてあるか」を、家族で確認しておくと安心です(保険証の取り扱いは加入する医療保険者や年齢・状況によって異なるため、詳細はお住まいの自治体や加入先の保険者にご確認ください)。
書類の置き場所を確認し終えたら、もう一歩だけ話を広げてみましょう。
「避難経路は把握してる?」「家の中で危ないところはない?」――そうやって家の中を一緒に歩いてみると、「そういえば、あの部屋の鍵はどこ?」「この書類、実は場所を知らないかも」という具合に、家族の誰も把握していなかった"わが家の属人化"に気づくことがあります。
防災グッズの中身を見直すのと同じように、「知っているつもり」だった家の情報を、一つひとつ確かめてみる。それが、終活や相続の話に、身構えずにたどり着くための助走になります。
まとめ:終活は「重い話」じゃなくていい。防災の日から始める小さな一歩
相続や終活の話は、どうしても「重い話」になりがちです。
でも、9月1日の防災の日を機に「実家の備え、大丈夫?」から会話を始めれば、自然な流れで一歩を踏み出せるかもしれません。
まずは、実家の防災グッズや避難経路を一緒に確認すること。家の中を歩きながら「この鍵はどこ?」「この書類は?」と聞いてみれば、家族の誰も把握していなかった"わが家の属人化"に、案外あっさり気づけるものです。
そこから、資産のこと、希望のこと、家族に伝えておきたいことへと、少しずつ話を広げていく。
それが、後悔を減らすための、いちばん現実的な始め方なのかもしれない…と、経験者として感じています。
筆者からのコメント
実は筆者自身も、父を急に亡くした際、「物置の鍵がどこにあるのか」「家の図面がどこに保管されているのか」といった、ごく細かなことが分からず苦労した経験があります。当たり前のように父一人に任せていたことが、思っていたよりずっと多かったのだと、後になって気づかされました。
資産や制度の話だけでなく、こうした「属人化していた、地味だけれど大事な情報」を家族で共有しておくことこそが、いざという時の負担を大きく減らしてくれるということです。
実家の避難経路や家の中の安全確認をしてみることは、そんな"うちの属人化"に気づく、身構えずに始められるきっかけになるはずです。
参考資料
- 厚生労働省「医療機関・薬局では、マイナ保険証か資格確認書をご提示ください」
- 一般社団法人生命保険協会「生命保険契約照会制度のご案内」
- 政府広報オンライン「家族の生命保険契約を一括照会!どこの会社に加入しているか調べられます
- 預金保険機構「口座登録法及び口座管理法に基づく業務」
- JCOM株式会社「親の相続経験に関する実態調査」(2026年8月6日)
- 株式会社中央プロパティー「【2026年調査】7割超が『実家の価値と権利』を未把握」(2026年8月12日)
- 株式会社クロス・マーケティング「家庭内の防災の備えは『できていない』が74%と昨年と変わらず」(2026年8月18日)
- 株式会社メディアシーク「【モバイルバッテリー調査】災害対策?旅行・出張や長時間の外出で必要性を実感 6734人に聞いてみた」(2026年8月12日)
校閲者出身の編集記者。人文社会系の一般書籍の校閲・社会科教材の制作を15年間経験。実体験から相続や介護について当事者目線で紐解くことを信条としている。証券外務員二種(二種外務員資格)・相続診断士・ガーデンコーディネーター資格を保有、早稲田大学卒。
