この記事はここがポイント
- 墓じまい(改葬)の改葬先には、永代供養の枠組みの中に合祀墓・個別安置・樹木葬・納骨堂など複数の選択肢がある
- 「永代供養」と「永代使用」はまったく別の意味の言葉であり、混同すると後悔のもとになる
- 離檀料や相続税の扱いなど、契約前・申告前に専門家や窓口への確認が欠かせない論点もある
お盆に実家で「お墓をどうするか」話し合ったご家庭も多いでしょう。墓じまいを決めても、次に悩むのが遺骨の行き先です。
近年は樹木葬や納骨堂など「永代供養」を選ぶ人が増えていますが、仕組みや費用を知らないと後悔につながることも。
前回に続き、墓じまいと改葬先選びのポイントを整理します。
お盆に増える「実家の墓、どうする」という会話
厚生労働省「衛生行政報告例」によると、改葬(お墓の引っ越し)の件数は2014年度の約8万4000件から2024年度には約17万6000件へと、10年でおよそ2倍に増えています。
実際、株式会社ゴールドオンラインが2026年8月1日に開催した「THE GOLD ONLINE フェス2026 SUMMER」の会場投票とWEB投票を合算して選出した「2026年上半期 お金と投資の流行語大賞」では、相続部門の部門賞に「墓じまい」が選出されたほか、「空き家の国庫帰属」や「孫を養子にする」「認知症による資産の凍結」といった言葉もノミネート。
空き家も、養子縁組も、認知症による資産管理も、そして「墓じまい」も、根っこにあるのは「誰がどう引き継ぐのか」という同じ悩みです。
お墓の問題も、決して例外ではありません。
こうした言葉が話題になるのは、家や資産の「引き継ぎ方」そのものが、以前より多様な選択を迫られる時代になっているからだと感じます。
空き家も、認知症による資産管理も、お墓の問題も、すべて「先送りにできない問題」として、お盆という帰省のタイミングに重なって意識されやすいのかもしれません。
社会全体で「引き継ぐこと」そのものが難しくなっている今、私自身もひとりの「墓守娘」として、実家のお墓の問題を人ごとではないと感じています。
お盆に親族と改葬の話をするたびに感じるのは、家や墓、資産の問題は結局すべて同じ土台の上にあるということです。
相続診断士の視点からみても、「お墓をどうするか」という小さな話から、資産全体の整理へと話が広がる可能性は少なくないと考えます。
「お墓」というひとつの悩みが、家族ひいては親族全体の課題を見直すきっかけになることもあるでしょう。
墓じまい(改葬)の手続きの基本的な流れ
「墓地、埋葬等に関する法律」における改葬とは、「埋葬した死体(焼骨を含む)を他の墳墓に移すこと」と定義されています。基本的な流れは次の3ステップです。
一般的な「改葬手続き」の流れ
- 今のお墓の管理者から「埋蔵証明書」を取得
- 新しい改葬先(受入先)から「受入証明書」を取得
- 遺骨が納められている市区町村に「改葬許可」を申請し、許可証の交付を受けてから遺骨を取り出す
必要書類や様式は自治体ごとに異なるため、実際の手続きはお住まいの市区町村窓口に早めに相談することが推奨されています。
今回は、この改葬先として近年注目される「永代供養」という考え方を中心に見ていきます。
改葬先の選択肢として注目される「永代供養」とは?
改葬先を考えるとき、最近よく耳にするのが「永代供養」という言葉です。
ただし、この言葉は法律上定義された用語ではなく、慣行上の呼び方とされています。一般的には、寺院や霊園が遺骨を預かり、永代にわたって供養することを指します。
「永代供養」と「永代使用」の違いに注意
ここで注意したいのが、似た言葉である「永代使用」とはまったく意味が異なるという点です。
永代使用は、永代使用料を払ってお墓(区画)を使用する権利を取得し、その土地を永代にわたって使用するというものです。
「永代」という言葉が共通しているために混同されやすいのですが、両者は別の仕組みだと理解しておく必要があります。
また、永代供養の「永代」も、実際には「未来永劫」を意味するわけではなく、三十三回忌など一定の期限が設けられているのが一般的で、期限は寺院・霊園によって異なります。
永代供養の4つのスタイル(合祀墓・個別安置・樹木葬・納骨堂)
永代供養の枠組みの中には、埋葬の仕方によっていくつかの種類があります。
- 合祀墓:ほかの方の遺骨と一緒に埋葬する形式
- 個別安置:一定期間は個別に安置し、期限を迎えると合祀される形式
- 樹木葬:墓石の代わりに樹木や草花を墓標として遺骨を埋蔵する方法
- 納骨堂:屋内施設に遺骨を安置する方法
どの形式も、承継者を必要としない点が共通の利点です。
子どもに管理の負担をかけたくない、あるいは子どもがいない、独身であるといった事情から、こうした永代供養の形を選ぶ人が増えている背景には、こうした事情があります。
一方で、個別安置や樹木葬・納骨堂の個別区画であっても、それがそのまま永続すると思い込むのは早計です。
多くの施設では、一定の年数を目安に、最終的には合祀スペースへ遺骨を移す契約になっているケースが一般的だといわれています。
「個別だから将来もずっと個別のまま」と考えていると、契約内容とのギャップに後から気づくことになりかねません。
供養の詳しい特徴についてはこちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください→「永代供養とは|費用の目安と墓じまい・手続きの基本を分かりやすく解説」
昭和のひところとは異なり、「継ぐ人がいない」という悩みは、決して特殊な事情ではなくなってきているのでしょう。
一人っ子同士の結婚や生涯未婚率の上昇を背景に、お墓についても「自分の代で終わらせる」という選択が、以前より自然に受け止められるようになってきたと感じます。
永代供養という言葉がこれだけ広まったのも、そうした時代の変化を映しているのかもしれませんね。
費用だけで「合祀墓」を選ぶリスク
永代供養は一般墓に比べて費用を抑えられるといわれていますが、合祀墓・個別安置・樹木葬・納骨堂のどれを選ぶかによって金額の幅は大きく異なります。
合祀墓はもっとも費用を抑えやすい一方、個別安置や個別区画は管理の手厚さに応じて費用が上がっていく傾向にあります。
実際の金額は施設や地域によって差が大きいため、具体的な費用相場は契約前に複数の候補を比較し、内訳まで確認しておくことが欠かせません。
よくある後悔として挙げられるのが、「費用の安さだけで合祀墓を選んだあと、やはり個別にお参りしたい気持ちが強くなった」というケースです。
合祀墓は一度埋葬すると遺骨を個別に取り出すことが基本的にできないため、後から気持ちが変わっても元には戻せません。
金額だけで決めず「何年後、何十年後に自分や家族がどう感じそうか」までイメージできると、後悔を防ぐ手がかりになるでしょう。
墓じまいあるある「離檀料トラブル」の対処法
加えて、改葬にあたって従来のお墓を檀家として抜ける際に、想定より高額な「離檀料」を求められたという相談が、独立行政法人国民生活センターに寄せられています。
同センターの相談Q&Aでは、離檀料は寺院へのお礼であるお布施の意味を持つものであり、料金に明確な基準はなく、基本的には当事者間の話し合いによるものとされています。
納得できない金額を求められた場合は、一人で抱え込まず、消費者ホットライン「188(いやや!)」を通じて最寄りの消費生活センターに相談することも選択肢のひとつです。
お墓の引っ越しは、単なる物理的な移動ではなく、お寺とのお付き合いの整理や親族間の意見調整など、心身ともにエネルギーを使う作業です。
特に離檀料のように明確な基準がないお金の問題は、多くの人が戸惑うポイントでしょう。
私自身も「墓守娘」として、正解のない問題に直面する大変さは痛いほどわかります。
次のページでは、少しでも不安を減らして改葬先を選ぶための具体的な視点と、よくある疑問への回答をまとめました。
校閲者出身の編集記者。人文社会系の一般書籍の校閲・社会科教材の制作を15年間経験。実体験から相続や介護について当事者目線で紐解くことを信条としている。証券外務員二種(二種外務員資格)・相続診断士・ガーデンコーディネーター資格を保有、早稲田大学卒。
