この記事はここがポイント
- 10年で倍増する改葬件数:少子化で「継承者がいない」悩みが40歳代から顕在化しています。
- 約6割が「お墓は自分の代まで」と共感し、新しい供養先が選ばれています。
- トラブルを防ぐ3ステップ:親族・お寺への早めの相談と正確な費用の把握が重要です。
もうすぐお盆休み。
故郷へ帰省して家族や親族と顔を合わせ、ご先祖様に思いを馳せるとともに、お墓参りに出かける方も多いのではないでしょうか。
しかし近年、そうしたお盆の恒例行事の裏側で、将来のお墓のあり方について重い悩みを抱え始める方が多くなっています。
少子高齢化やライフスタイルの変化、さらには核家族化や地方から都市部への人口流出の進行により、先祖代々のお墓をこれまでの形で維持し続けることが物理的にも経済的にも難しくなっています。
お墓参りのために遠方まで足を運ぶ体力的な負担に加え、年間を通じて発生する管理費やお布施などの経済的負担が、年金生活を控えた世代に重くのしかかっているのです。
その結果、お墓を更地にして管理者に返し、別の形で供養する「墓じまい(改葬)」を選択する人が大幅に増加しています。
とはいえ、「何から始めればいいのか全く見当がつかない」「最終的な費用はどれくらいかかるのか」「親族やお世話になったお寺とトラブルにならないためにはどう立ち回ればいいのか」と、見えない壁に対して不安を持つ方も多いでしょう。
本記事では、自身も実家の「墓守娘」であり、相続診断士の資格を持つ編集記者としての視点から、国が発表している最新のデータや各種アンケート調査をもとに、墓じまいの実態と、トラブルを防いで後悔しないためのポイントを詳しく解説します。
終活の一環として自分自身が入るお墓の準備を始める方がいる一方で、すでにある「先祖代々のお墓」をどうするかが重い課題になっているご家庭も決して少なくありません。
暮らしとお金に関する各種の一次データを日々読み解いていると、親世代の介護や相続といった現実に直面する50歳代前後から、このお墓の問題が急浮上してくるのがわかります。
実はお墓というものは、「購入」したといっても土地のように不動産登記の対象になるわけではありません。
「使用権」を得て、その権利を維持するために管理費を支払い続ける仕組みなのです。
だからこそ、不要になったからといって簡単に「断捨離」できるものではありません。しかるべき手順や注意点を知って、未来の家族への負担を減らす方法を一緒に考えていきましょう。
データが語る「墓じまい」の倍増と維持費の重圧
「墓じまい」はもはやごく一部の限られた人たちだけの特別なことではありません。
グラフで見る「改葬件数」の推移(1997年度~2024年度)
厚生労働省の調査によると、墓じまい(改葬)の件数は、2014(平成26年)度には約8万4000件でしたが、2024(令和6)年度には約17万6000件へと、10年の間で倍増しています。
少子化や核家族化が進み、「お墓を継承してくれる人がいない」「子どもや家族に経済的・心理的な負担をかけたくない」といった理由から、具体的な行動を起こす人が増えている様子がうかがえます。
お墓の引っ越しである「改葬」の手続きは、新しい供養先、現在の墓地管理者、行政機関の順に進めます。
近年では、改葬の最終地点として、従来の一般墓ではなく、納骨堂への「収蔵」や、樹木葬など自然に還る「埋蔵法」を選ぶケースも主流になりつつあります。
受入証明書の入手:まず新しい供養先を決め、管理者から「受入証明書(墓地使用許可証など)」を発行してもらいます。
改葬許可申請書の準備:現在のお墓がある市区町村で「改葬許可申請書」を入手し、現在の墓地管理者に署名・捺印(埋蔵証明)をもらいます。
改葬許可証の発行:揃った書類を市区町村の役場へ提出し、正式な「改葬許可証」を発行してもらいます。
遺骨の取り出しと墓所の返還:現在の墓地管理者に「改葬許可証」を提示し、遺骨を取り出します。
このとき仏教の場合は、お墓に宿った魂を抜く「抜魂式(お霊抜き、閉眼供養など)」などの宗教的な儀式を行うのが一般的です。
その後、墓石を解体・撤去して敷地を更地に原状回復し、管理者に返還します。
新しい供養先への納骨:新しい供養先の管理者に「改葬許可証」などを提出し、遺骨を納めると手続きは完了です。
なお、必要書類の名称や詳細な手続きの流れは自治体ごとに異なる場合があるほか、宗教や宗派によって必要な儀式も変わります。
トラブルなくスムーズに進めるためには、自己判断せず、事前に市区町村の窓口や現在のお墓の管理者へ確認しながら進めることが大切です。
維持費への負担感と将来への不安
お墓の維持を難しくさせている要因の一つは、やはり「費用」の問題です。
お墓の管理費として「年間」いくら支払っていますか?
株式会社huhuの調査によると、お墓の維持にかかる年間の管理費は「5000円〜1万円未満」が最多となっていました。
金額だけを見ると、そこまで家計を圧迫するような高額ではないように思えるかもしれません。
しかし、同調査では実に78.0%の人がこの管理費の支払いを「負担に感じている」と回答。
さらに、今後の不安要素として最も多かった回答が「管理費の値上げ」(61.0%)でした。
決して余裕があるわけではない年金生活、日々の物価高が家計にのしかかる中、一度契約したら将来にわたって半永久的に支払い続けなければならない固定費の存在は、数字以上の心理的重圧となっていることが読み取れます。
さらに、遠方のお墓であれば交通費もかさむため、実質的な負担額はさらに大きくなるでしょう。
6割が共感「お墓は自分の代で終わらせてよい」
管理費の負担や承継者不在といった現実的な問題に直面し、お墓に対する伝統的な価値観も大きく変化しています。
「自分の代でお墓を終わらせてもよい」という考えに、どの程度共感しますか?
一般社団法人 終活協議会/想いコーポレーショングループの実態調査では、「自分の代でお墓を終わらせてもよい」という考えに対し、過半数を超える61.1%の人が共感を示しました。
「家」として代々継承することを前提とした従来型のお墓から、個人の代で完結させる考え方がいまや多数派になりつつあることがうかがえます。
多様化する新しい「供養先」の選択肢
お墓に対する価値観の変化に伴い、墓じまいをした後の新しい「供養先」の選択肢も多様化しています。
同調査で「もしご自身が供養先を選ぶとしたら」という問いに対し、従来の「一般墓」を選んだ人は23.3%にとどまりました。
その一方で、永代供養(19.5%)、散骨(15.7%)、樹木葬(15.0%)、手元供養(3.3%)といった新しい供養先の合計は53.5%にのぼり、全体の半数を超えています。
さらに、国民生活センターの広報誌でも、インターネットを使ったお墓を利用するなど、これまでの枠にとらわれない弔いの形が広がっていることが指摘されています。
次世代に負担を残さず、自分たちらしい供養の方法を選ぶ人が増えているのです。
少子化が進む現在、一人っ子同士が結婚するケースも珍しくありません。もし夫婦がそれぞれの実家の「墓守」を任された場合、将来我が子には二つのお墓の管理と費用を背負わせることになってしまいます。
「お墓は自分の代で終わらせる」という価値観が6割以上の共感を集めるのも納得のいく話です。
永代供養や樹木葬など多様な選択肢がある今こそ、これまでの慣習やしきたりに過度に縛られず、自分たちの家族に合った無理のない形を探すチャンスかもしれません。
校閲者出身の編集記者。人文社会系の一般書籍の校閲・社会科教材の制作を15年間経験。実体験から相続や介護について当事者目線で紐解くことを信条としている。証券外務員二種(二種外務員資格)・相続診断士・ガーデンコーディネーター資格を保有、早稲田大学卒。
