この記事はここがポイント
- 庭じまい:庭木や芝生を撤去し、手入れの負担そのものをなくす選択肢
- ローメンテガーデン:緑を残しつつ、人工芝や防草シートで手間を大幅に減らす工夫
- どちらが向くかは、体力・費用・庭への愛着のバランスで決まる
厳しい残暑がようやく落ち着き、そろそろ庭仕事が心地よくできる季節になってきました。
とはいえ、夏の間はどうしても外に出る気になれず、雑草や伸びた枝をそのままにしてしまった、という方も多いのではないでしょうか。
草むしりでひざが痛む、剪定のたびに脚立が怖くなる、水やりだけで汗だくになる。そんな悩みを抱えているなら、庭そのものをなくす「庭じまい」と、緑を残しながら手間を減らす「ローメンテガーデン」という2つの選択肢を、この機会に検討してみませんか。
庭仕事を「気合」で乗り切る時代の終わり
もちろん、夏の間、庭仕事を控えていたみなさんには理由がるでしょう。
総務省消防庁によると、昨年(令和7年)5月から9月にかけて熱中症で救急搬送された人は10万510人にのぼり、平成20年の統計開始以来もっとも多い数となりました。
熱中症の救急搬送《年齢別・場所別割合》
このうち65歳以上の高齢者は5万7433人で、全体の57.1%を占めています。
搬送された場所としては「住居」が38.1%ともっとも多く、庭先や玄関まわりなど、住まいのすぐそばでの熱中症も少なくないことがうかがえます。
草むしりに追われる夏を、もう繰り返さない――「庭じまい」という決断
「庭じまい」とは、庭木の伐採や芝生の撤去を行い、庭そのものを手入れの要らない状態に変えることを指す言葉です。
更地にして砂利を敷く、防草シートを張る、あるいは駐車場として使えるように舗装するなど、仕上げ方はさまざまですが、共通しているのは「これ以上、庭のために体を使わない」という選択をすることです。
費用は、木の高さや本数、抜根まで頼むかどうか、トラックや重機が敷地に入れるかどうかによって大きく変わります。
芝生の撤去や砂利敷き、防草シート施工まで一式で頼むと、庭全体の広さに応じてまとまった金額になることも少なくありません。
金額だけを比べるのではなく、何をどこまでやってもらえるのかも含めて、複数の業者に現地を見てもらったうえで判断するのが安心です。
引っ掛かるのは「費用」よりも「気持ち」の問題?
悩ましいのは、費用よりもむしろ気持ちの面かもしれません。夫婦で植えた木、子どもの成長に合わせて手入れしてきた芝生には、それぞれの思い出が積み重なっています。
「実家の片づけ」で家具ひとつ処分するのに手が止まってしまうのと同じように、庭木を切る決断にも時間がかかって当然です。
焦って一気に決めるのではなく、まずは造園業者に現地を見てもらい、複数の見積もりを比べながら、納得できるペースで進めるのがよいでしょう。
なお、庭木の伐採や抜根は、葉が落ちて枝ぶりを確認しやすい秋から冬にかけてが依頼しやすい時期だといわれます。
夏場のように虫や蜂を気にしながらの作業にならない分、業者にとっても安全に進めやすく、繁忙期を避けられれば見積もりの相談もゆっくり行えます。
暑さが落ち着いてきた今の時期は、庭のこれからをじっくり考えるにはちょうどよいタイミングともいえそうです。
緑は残したい、でも手間は減らしたい――「ローメンテガーデン」という工夫
一方、庭という空間そのものは残したいという方に向くのが「ローメンテガーデン」です。
芝生を人工芝に置き換える、雑草が生えやすい部分に防草シートを敷いて砂利や人工芝で覆う、水やりの手間がかかる一年草をやめて丈夫な多年草やグランドカバー植物に植え替えるなど、緑を保ちながら作業の頻度を減らす工夫を組み合わせます。
手間をかけずに彩りが欲しいなら、植えっぱなしでも毎年花を咲かせてくれる多年草を選ぶのもひとつの方法です。
秋に野趣あふれる花を咲かせる多年草「シュウメイギク」
「植えっぱなしで一年中「いい香りの花が咲く」庭づくり!季節ごとのおすすめ多年草・庭木9選」では、四季折々の庭を彩る植物をご紹介しています。あわせてご覧ください。
毎週の芝刈りから卒業する――「人工芝」という現実的な選択
人工芝の施工費用は面積に応じて変わり、庭全体を敷き替えるとなるとまとまった金額になりますが、天然芝のように毎週の芝刈りや水やりを続ける必要がなくなる分、長い目で見た体力的な負担は小さくなります。
ただし、まったく手入れが要らないわけではありません。雑草の早期除去や落ち葉の掃除、目土の補充といった軽い手入れは続ける必要があります。
「手間ゼロ」ではなく「手間を大幅に減らす」選択だと考えておくと、導入後のギャップが小さくて済みます。
危ない作業だけプロに任せる、という庭仕事の分担のしかた
実際、どのくらいの人が庭の手入れを自分でこなしているのでしょうか。
ダスキンが2026年4月に公表した調査によると、庭付き戸建てに住む人のうち、自分や家族で手入れをしていると答えた人は約54.6%にのぼった一方、業者に依頼していると答えた人は約9.2%にとどまりました。
業者に依頼する内容としては「高い庭木の剪定」が最も多く挙げられており、危険を伴う作業ほど外部の手を借りる傾向がうかがえます。
高い場所での剪定作業や脚立を使う作業を減らせる、というのもローメンテガーデンの利点です。
消費者庁も、転倒・転落は高齢者の家庭内事故の中でも特に多いものの一つだと注意を呼びかけています。
庭仕事のなかでも、脚立に乗っての剪定や、しゃがみ込んでの草むしりは膝や腰への負担が大きい作業です。
植栽の配置を低木やグランドカバー中心に見直すだけでも、危険な体勢を取る場面そのものを減らすことができます。
芝生に代わる地面をつくる――「グランドカバー植物」という選択肢
人工芝ほど費用をかけたくない場合は、芝生の代わりにタイムやリュウノヒゲといった横に広がって密に茂る植物を植える方法もあります。
生育が進めば雑草が入り込みにくくなり、刈り込みの頻度も芝生に比べてぐっと減らせます。
庭全体を一度に変える必要はなく、まずは負担の大きい一角だけ試してみて、様子を見ながら範囲を広げていくというやり方も現実的です。
答えはひとつじゃない。体力と「庭への想い」で選べばいい
庭じまいとローメンテガーデン、どちらが正解ということはありません。庭に強い思い入れがなく、これ以上体力を使いたくないなら庭じまいが、緑のある暮らしを続けたいならローメンテガーデンが向いているかもしれません。
庭の半分だけ更地にして残り半分をローメンテ化する、というように両方を組み合わせる方法も考えられますし、判断がつかないうちは、まず負担の大きい一角だけ手を入れて様子を見るという進め方でも良いでしょう。
迷ったときは、造園業者に両方のプランで見積もりを取ってみるのも一つの方法です。
涼しくなってきたこの時期に、体力に無理のない暮らし方を少しだけ見直してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」(令和7年10月29日公表)
- 株式会社ダスキン「庭の手入れ・管理の実態に関する調査」プレスリリース(2026年4月6日公開・PR TIMES)
- 消費者庁「みんなで防ごう高齢者の事故」
- 消費者庁 同資料PDF
庭の植物には、それを迎え入れた人の気持ちがこもっているものだと思います。
我が家にも、父が遺した大きなヒノキがありました。日当たりを遮るうえ古葉の掃除も一苦労で、しかもよく見ると太い根が物置を押し上げていて、植木屋さんからは抜根を勧められました。
それでも、父の木を根こそぎなくしてしまうのはどうしても忍びなく、高さ2メートルほどを残して切ってもらうことにしたのです。
今回調べてみて感じたのは、庭じまいもローメンテガーデンも、業者に相談する段階で初めて具体的な金額と作業内容が見えてくるということです。
ネットの相場だけで判断せず、まずは見積もりを取って、家族とも相談しながら決めていくのが遠回りのようで一番の近道だと思います。
我が家では、残した幹に蔦とハツユキカズラを這わせています。どちらも地植えにすると驚くほど旺盛に広がる植物なので、庭全体に放つのはおすすめしませんが、古い切り株を包むように上へ上へと伸びていく姿は、今ではすっかり庭の見どころのひとつです。
全部残すか、全部なくすかだけでなく、高さや形を変えて木と共存する道もある。そのことを、この庭が教えてくれました。
校閲者出身の編集記者。人文社会系の一般書籍の校閲・社会科教材の制作を15年間経験。実体験から相続や介護について当事者目線で紐解くことを信条としている。証券外務員二種(二種外務員資格)・相続診断士・ガーデンコーディネーター資格を保有、早稲田大学卒。