住まい

【墓じまい】改葬件数は10年で倍増。お盆に考える「先祖代々のお墓問題」後悔しないための3つの鉄則

「お墓はもう要らない?」後継ぎ不在と費用負担がネックに。今こそ知っておきたい費用のリアルと、親族・お寺とのトラブル回避術

執筆者熊谷 良子LIMO&ホーム編集部記者/ 相続診断士 / ガーデンコーディネーター/証券外務員二種資格
21:06

立ちはだかる「費用」「トラブル」の壁

さて、いざ墓じまいを進めようと決意しても、実行に移すまでにはいくつかの大きな壁が立ちはだかります。

費用の不透明さと予想外の出費

最も大きな壁が「見えないお金」の問題です。墓じまいには、現在ある墓石の撤去工事費(解体・処分費用)、お寺へのお布施(離檀料)、そして新しい供養先の費用など、複数の段階で支払いが発生します。また、閉眼供養(魂抜き)のためのお布施や、行政手続きに関する諸費用も必要です。

お墓の維持や墓じまいにかかる費用、具体的な金額を知っている?

お墓の維持や墓じまいにかかる費用、具体的な金額を知っている?
出所:一般社団法人 終活協議会/想いコーポレーショングループ 【2026年最新】約9割が墓じまい費用を「具体的に知らない」 一方で6割が「自分の代でお墓を終わらせてもよい」に共感――墓じまいと供養先の再選択に関する実態調査

しかし、前述の調査によると、約9割(88.6%)の人が墓じまいにかかる具体的な費用を「知らない」と回答。

費用の見えにくさが二の足を踏ませる要因となっていることがうかがえます。

また、国民生活センター『「国民生活」2025年12月号』によれば、新しい供養先として人気の「合祀・永代供養」でも、遺骨1体につき数十万円かかる施設があり、新たにお墓を建てるより費用がかさんだり、先祖代々のお墓から複数の遺骨を移すことで想定外の高額な費用がかかったりするケースもあると指摘されています。

お寺や親族との「離檀」トラブル

費用の問題に加えて深刻なのが、周囲とのトラブルです。

国民生活センターには、墓や葬儀サービスに関して「価格やサービス内容について十分な説明がない」といった相談が寄せられています。

中でも「墓じまいのために高額な離檀料を請求された」といったトラブルは頻繁に報告されており、地方自治体の消費生活センターにも「離檀料として200万円かかると告げられた」といった相談が寄せられています。

離檀料には明確な法的な基準金額がないため、当事者間の話し合いで解決する必要があります。

しかし、こうしたトラブルの背景には、単なる金銭への執着だけでなく、長年にわたりお墓を放置したまま、事前の相談もせずに突然墓じまいを申し出たことによる「寺院側との感情的な軋轢」が原因となっていることも少なくないとも言われます。

お寺側としても、管理費やお布施によって墓地全体の維持運営を行っている側面があるため、一方的な通告は反発を招きやすいのです。

お墓に関するトラブルは多岐にわたり、その内容も複雑化しています。お寺からの高額な離檀料請求が話題に上がることが多いですが、最近では「永代供養」を掲げる新しい納骨施設でのトラブルも報告されています。

国民生活センターの広報誌でも指摘されている通り、「永代供養」という言葉は安心感というイメージが先行しがちです。しかし実際には、遺骨の管理場所や個別の供養方法、管理期間が契約書で明確に規定されていないケースが存在し、場合によっては景品表示法における不当表示にあたる可能性も指摘されています。

新しい供養先を選ぶ際は、パンフレットの記載だけで判断せず、契約内容や管理規則の細部まで事前に確認することがトラブル回避につながります。

墓じまいで「後悔しない」ための3つのステップ

では、周囲と揉めることなくスムーズに墓じまいを進めるためにはどうすればよいのでしょうか。ここまでのデータや事例を踏まえた3つのステップをご紹介します。

ステップ1. 家族や親族への「早めの相談」

墓じまいで最も大切なのは、関係者全員との合意形成です。前述の調査では、4人に1人がお墓の今後について「家族に話を切り出したいのに切り出せない」と悩んでいます。

自分一人で決めてしまい、事後報告になってしまうと、親族間で「なぜ勝手に片付けたのか」と大きなしこりを残すことになりかねません。もうすぐやってくるお盆やお彼岸など、家族が集まるタイミングをきっかけに、早めに話し合いの場を持つことがトラブル回避の第一歩です。

ステップ2. 正しい費用の把握と専門家への相談

まずは現在の墓地の管理者(お寺や霊園)と新しい供養先の両方に相談し、費用の全体像を見積もりましょう。

特にお寺に対する「離檀料」は、長年ご先祖様のお骨をお世話していただいたことへのお礼という側面もあります。

トラブルを避けるためにも真摯に話し合い、お互いが納得できる適正な金額を擦り合わせることが重要です。

また、墓石を撤去する前には、お墓に宿った魂を抜く宗教的儀式である「抜魂式(ばっこんしき/お霊抜き)」を行うのが一般的です。

こうした一連の手続きに不安がある場合は、専門家に相談するのも有効です。

ステップ3. 新しい供養先を「期限を決めて」選び、手続きに備える

検討中のお墓の種類は、「樹木葬」が約6割で最多

検討中のお墓の種類は、「樹木葬」が約6割で最多
出所:株式会社鎌倉新書『~遺骨を自宅に置いたまま、お墓を決められない~「お墓選びが進まない理由」を調査』

現代の墓じまい(改葬)は、単に別の一般墓へ遺骨を引っ越しさせるだけではありません。

株式会社鎌倉新書の調査によると、検討されているお墓の種類(複数回答)は「樹木葬」が56.4%と最も多く、次いで「永代供養墓・合祀墓」(47.4%)、「納骨堂」(32.1%)が続きました。

一方で、従来の「一般墓(墓石あり)」は16.7%にとどまっています。ほかにも、海などに還す「散骨」(3.8%)や、遺骨の一部を自宅に置く「手元供養」(2.6%)など、ライフスタイルに合わせたさまざまな改葬方法が存在することがわかります。

しかし、このように選択肢が多様化している分、「どれを選べばいいのか」と迷い、お墓選びの検討が長期化してしまう方も少なくありません。

費用、アクセスの良さ、今後の管理負担などを踏まえ、「いつまでに決めるか」という明確な期限を設けて、家族にとって一番重視する条件を整理することが大切です。

まとめにかえて

厚生労働省のデータが示す通り、改葬件数が倍増している今は、まさに日本の「供養のあり方の転換期」にあると言えるでしょう。

墓じまいは決して「お墓をなくすこと」や「ご先祖様をないがしろにすること」ではないと筆者は考えます。

「未来の家族の負担を減らし、現代のライフスタイルに合った新しい供養のカタチを選ぶこと」だと言えます。

もうすぐお盆を迎えますが、家族や親族が集まるこの機会に、まずは現状の維持費の負担や新しい供養の選択肢を知り、お墓の今後について話し合うことから始めてみてはいかがでしょうか。

若いうちは友人や知人との関わりを優先しがちですが、年齢を重ねて自身のルーツに向き合うようになると、世代を超えた家族の縁の深さに改めて気づかされるものです。

実家のお墓を管理する「墓守娘」として親を見送り、自身の終活も見据える筆者自身、どれほどデータや知識を集めても、それだけでは割り切れない「祭祀」のデリケートさを痛感しています。

だからこそ、問題解決の鍵となるのは、最終的に「家族や親族との丁寧な話し合い」「早めの情報共有」に尽きると実感しています。

禍根を残さず、心を込めて墓じまいを進めること。

それは単なるお墓の整理ではなく、老後の不安を手放し、これからの自分らしい人生を歩み出すための大切なステップになるはずです。

参考資料

Google で優先するソースとして追加
熊谷 良子LIMO&ホーム編集部記者/ 相続診断士 / ガーデンコーディネーター/証券外務員二種資格

関連タグ