この記事はここがポイント
- タワマンの資産価値は立地や管理状態、30年以上かつ大規模修繕2回以上を計画する修繕積立金の積立状況が決定要素。
- 高さ60m超の物件は2018年度から高層階ほど固定資産税が上がり、2024年1月からは相続税の評価ルールも変更。
- 段階増額リスクを考慮した修繕積立金や諸税など年間維持費を含め、購入前に行う専門家への相談と資金計画。
タワーマンション(以下、タワマン)を検討するとき、「何階からがタワマンなのか」「資産価値は落ちにくいのか」「維持費や税金は通常のマンションとどう違うのか」と、気になる点が次々に出てくるのではないでしょうか。
眺望や共用施設といった魅力がある一方、費用面の負担も小さくありません。
住宅の購入は、買う場面だけでなく、持ち続けていつか手放す(または引き継ぐ)ところまで見通して判断することが大切です。
そこで本記事では、タワマンの定義の考え方、資産価値を左右する要素、修繕積立金の見方、税金のルール、購入前のチェックリストを、公的資料をもとに整理します。
資産価値の将来を断定するものではなく、ご自身で判断するための材料としてお読みください。
タワーマンションは、眺望や共用施設の華やかさから「勝ち組の象徴」のように語られることがあります。しかし、住宅の購入は買う場面だけでなく、持ち続け、いつか手放す(または引き継ぐ)ところまで見通して判断すべきものだと思います。その視点で見ると、タワマンの資産価値は慎重に見極める必要があります。
資産価値は「タワマンだから」ではなく、立地、管理、修繕計画と積立、築年数などの要素で決まります。つまり、タワマンというだけで価値が守られるわけではありません。眺望や充実した共用施設など、タワマンならではの魅力がありますが、不動産の価値を決める基本は、やはり立地です。駅からの距離や周辺の生活環境など、その地域が持つ市場性を見極める必要があります。
一方で、タワマンの場合、建物の管理状態も重要な判断材料になります。一般的に総戸数が多く、エレベーターや機械設備、共用施設などを数多く備える大規模マンションでは、日常的な管理だけでなく、将来の大規模修繕費用が鍵となります。長期修繕計画や修繕積立金の状況まで確認することが、将来の資産価値を考えるうえで欠かせないと思います。
タワマンとは?「何階から」「何メートルから」の考え方
「タワマン」は一般的な通称であり、何階以上をそう呼ぶかを定めた法令上の定義はありません。
なお、国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、超高層マンションを「一般に地上20階以上」としています。一方で、制度上は「高さ60m」が一つの区切りになります。
- 建築基準法:20条1項1号は、高さが60mを超える建築物について、構造計算による安全性の確認と国土交通大臣の認定を求めています。
- 地方税法:352条2項は、建築基準法20条1項1号の建築物のうち、居住用の専有部分が複数の階にあり2以上あるものを「居住用超高層建築物」とし、固定資産税の按分方法を別に定めています。
通称としてのタワマンと制度上の「超高層」は完全には一致しません。高さや適用される制度は、重要事項説明(契約前に宅地建物取引士が説明する物件・条件の重要事項)の際に質問するなどして確認しておくと安心です。
資産価値を左右する5つの要素【2026年時点の整理】
「タワマンだから落ちにくい」「タワマンは値下がりしやすい」といった一律の見方は当てはまりません。価格は、建物の種類よりも次の要素の組み合わせで決まる面が大きいと考えられます。
- 立地:駅からの距離、生活利便性、エリア全体の需要と供給
- 管理状態:日常管理の質、修繕履歴、管理組合の運営
- 修繕の計画と積立状況:長期修繕計画、修繕積立金の積立状況、大規模修繕の実施予定
- 築年数・規模:築年数、総戸数、共用施設の維持費の負担
- 住戸の条件:階、向き、眺望、周辺の新築供給
民間会社が公表する中古マンション価格の動向データは、調査時点・対象エリアで数値が大きく変わります。将来の価格を示すものではないため、参考値にとどめてください。
修繕積立金と長期修繕計画:超高層ならではの見方
管理の良し悪しは、資産価値にも暮らしやすさにも直結します。区分所有者は管理組合を構成し、管理費や修繕積立金を負担します。
国土交通省によると、2021年9月に見直された「長期修繕計画作成ガイドライン」では、長期修繕計画は30年以上の期間で、大規模修繕工事を2回以上含む計画とすることが示されています。
また、同省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(2024年6月改定)では、積立方式として次の2種類を整理しています。
- 均等積立方式:将来にわたり毎月ほぼ同額を積み立てる方式
- 段階増額積立方式:当初の負担を抑え、築年数に応じて段階的に引き上げる方式
同省は、段階増額積立方式などは増額時に区分所有者間の合意形成ができず修繕積立金が不足する事例もあるとして、将来にわたり安定して積み立てる観点では均等積立方式が望ましいとしています。
また、築年数に応じた必要額の増加や区分所有者の高齢化を踏まえ、段階増額の場合も早期に引上げを完了させることが望ましいとしています。
さらに、段階増額の場合の目安として、均等積立方式とした場合の月額を基準額として、初期額は基準額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内とする考え方が示されています。
タワマンはエレベーターや外壁、機械設備、共用施設の規模が大きく、大規模修繕の費用や工期、工法も一般的なマンションと異なる傾向があります。
ただし、費用は物件や規模で大きく変わるため、ここでは一律の金額は示しません。「将来いくら上がる計画なのか」「計画の見直しはいつ行われたか」を、資料で確認することが大切です。
固定資産税は高層階ほど高い?2017年度税制改正のポイント
「高層階は税金が高い」と聞いたことがある方もいるかもしれません。これは、2017年度の税制改正で、居住用超高層建築物の固定資産税の按分方法が見直されたことによります。
従来は、建物全体の税額を各区分所有者の専有床面積の割合で按分していたため、同じ面積であれば高層階も低層階も税額が同じでした。
総務省の資料によると、税額の算出に用いる専有床面積を実際の取引価格の傾向を踏まえて補正するよう見直され、階に応じた補正をかけて按分する形になりました。
- 対象:高さ60mを超える居住用超高層建築物(地方税法352条2項)
- 補正の考え方:N階の専有床面積に対する補正率を「100+10/39×(N−1)」とする(階が1つ上がるごとに約0.26ポイントずつ上乗せ。地方税法施行規則15条の3の2)
- 結果:高層階は税額が上がり、低層階は下がる方向になる
- 建物全体の税額の総額:変わらない(建物全体の税額を按分する仕組みのため、配分が変わるだけ。地方税法352条2項)
この見直しは、2018年度から新たに課税される居住用超高層建築物に適用されています(2017年4月1日より前に売買契約が結ばれた住戸を含むものは除きます)。
それ以前から課税されている建物は、従来の按分方法のままです。実際の税額は、納税通知書や自治体の窓口、税理士にご確認ください。
相続税の評価ルールも2024年から変わっている
以前は、タワマンの相続税の評価額が実際の価格より低くなりやすいことから、いわゆる「タワマン節税」が話題になりました。
こうした差を縮めるため、2024年1月1日以後に相続・贈与で取得した居住用の分譲マンションは、築年数や総階数、所在階などをもとに評価額を補正するルールに変わっています(国税庁)。
高層階ほど評価額が上がりやすい仕組みのため、「相続対策になる」という説明はそのまま受け取らず、相続や贈与を考える場合は税理士や税務署に確認しましょう。
タワマンのメリットとデメリットを中立に整理
メリットもデメリットも、物件ごとに差があります。「物件による」「条件つき」という前提で見てください。
【メリットとして挙げられやすい点】
- 眺望や採光、共用施設、セキュリティ設備が充実している物件がある
- 免震・制震構造や防災設備を備える物件がある(有無は物件による)
- 駅近など、立地の優位性を持つ物件がある
【デメリット・注意点として挙げられやすい点】
- 管理費・修繕積立金の負担が大きくなりやすい
- エレベーターの待ち時間や混雑が生じることがある
- 大規模修繕の費用や計画、合意形成に時間がかかる場合がある
- 高層階は風や揺れを感じやすく、固定資産税も上がる方向になる(2018年度以降に新たに課税される高さ60m超の物件の場合)
防災は、停電・断水を想定した一般的な備えに加え、自治体・消防の公的情報や管理組合の防災計画をご確認ください。
購入前チェックリスト:契約前に確認したい8項目
契約直前に慌てないよう、次の8項目は早めの確認をおすすめします。
- 長期修繕計画があるか(30年以上・大規模修繕2回以上が目安)、直近の見直し時期はいつか
- 修繕積立金の積立状況、段階増額の有無と将来の増額予定
- 管理規約・使用細則、管理会社の体制
- 過去の大規模修繕の履歴と、次回の予定
- 管理費・修繕積立金・固定資産税を含む年間の維持費
- 耐震・防災設備と、停電時の備え
- 資金計画(ローン・諸費用)と、売却する場合の想定
- 重要事項説明書の内容(不明点は宅地建物取引士に質問する)
資金計画は、頭金・諸費用に加え毎年の維持費まで含めて見通すことが大切です。金額は物件ごとに異なるため、ファイナンシャルプランナー(FP)にも相談しながら検討しましょう。
賃貸で住む場合の考え方
タワマンの賃貸は、物件・エリア・階で家賃の幅が大きいため、具体的な金額は示しません。
購入との違いは、所有の有無、維持費(購入は管理費・修繕積立金・税金を負担、賃貸は家賃・共益費などとして負担)、住み替えの自由度(賃貸のほうが高い)で整理できます。
間取りや内装も物件ごとに異なるため、ご自身のライフプランに合うかを基準に比較してみてください。
まとめ
タワマンの資産価値は、「タワマンだから」ではなく、立地、管理状態、修繕計画と積立状況、築年数、周辺の需給といった要素で左右されると考えられます。高層階ほど固定資産税が上がる仕組みや、相続税の評価ルールの変更も、事前に知っておきたいポイントです。
長期修繕計画と修繕積立金の状況を資料で確認し、年間の維持費と税金を含めた資金計画を立てることが、判断のポイントになるのではないでしょうか。購入や手続きを進める際は、宅地建物取引士、FP、税理士などの専門家にも相談しながら進めていただければ幸いです。
ご利用にあたっての注意
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の物件・サービス・事業者の購入や契約を推奨・勧誘するものではありません。記載の制度・税・数値は2026年時点で確認できた範囲の一般的な目安であり、地域・物件・時期により異なります。法令・税制・自治体の運用は改正される場合があります。購入・契約・相続・税務等の最終的な判断は、公式情報の確認および専門家(宅地建物取引士、FP、税理士、マンション管理士、自治体の窓口など)への相談のうえ、ご自身の責任で行ってください。
参考情報
株式会社モニクルリサーチが運営する経済メディア『LIMO』の住まい・暮らし領域『LIMO&ホーム』編集部。元金融機関出身者や元記者、専門資格保有者が住宅・お金・ガーデニングなどを解説する。
大手住宅メーカーで38年間勤務。350棟超の住まいづくりに立ち会い、国内の住宅営業・支店運営から、海外法人の経営、都市開発まで経験。住文化や住宅事情を知る実務家として、住まいを暮らしの視点から解説。
「住まいとしての価値」と「不動産としての資産価値」を分けて考える
タワマンを購入する際、見学した部屋からの圧倒的な眺望で、マイホームの夢を追うロマンが膨らみます。バルコニーで眼下に広がる街並みを眺めながら腕組みをしていると、「天下取ったぞ!」という、気分にさせてくれるものです。
私は海外(オーストラリア、アメリカ)での不動産開発事業に関与した経験があります。戸建て住宅と異なり、マンションなどの高層建築では「眺望」が重要な決め手であり、世界共通の不動産価値の一つであると感じています。
例えば、シドニー近郊のマンションでは、ハーバーブリッジやオペラハウスが見えるかどうかが、価格や抽選倍率に大きく影響します。アメリカのソルトレイクシティでも、25年前のオリンピックでのスキージャンプ台の五輪マークを遠望できる部屋は高価格でも即完売でした。東京でも富士山やタワーの眺望がある物件は人気があります。「眺望」は、古今東西で共通の憧憬であり、販売側からすれば「勝ち組の象徴」という演出をするための、理想的な要素なのです。
しかし、購入時の憧れと資産価値としての本質は別のものです。住宅の資産価値は、購入した時点ではなく、その後の管理や維持保全、周辺環境の変化などで左右される点は心に留めるべきだと思います。
住まいづくりや不動産開発などに携わってきた立場からお伝えしたいことは、特にタワマンを購入する際には、「住まいとしての価値」と「不動産としての資産価値」を分けて考えることが大切だということです。