この記事はここがポイント
- 不動産広告の徒歩表示は道路距離80mを1分で換算され、実際の体感時間と異なる可能性
- 全国平均家賃約5.9万円はあくまで目安で、地域や物件条件で大きく変動すること
- 駅からの距離と家賃のバランスは、個人のライフスタイルに合わせ検討するべき点
新しい部屋を探していると、「駅から近い物件は家賃が高い」「少し歩けば家賃が下がる」という声を耳にすることが多いのではないでしょうか。
同じような条件の部屋でも、最寄り駅までの距離によって家賃の印象が変わることは少なくありません。
とはいえ、駅からの距離をどこまで優先すべきかは、通勤・通学のスタイルや暮らし方によって答えが変わります。
そこで今回は、賃貸物件を選ぶときに「駅からの距離」と「家賃」をどう考えればよいか、公的な統計データや不動産広告のルールを踏まえながら整理。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産・金融分野で7年にわたって取材・執筆を続けてきたライターにお話を伺っていきます。
物件ごとの相場は地域や条件によって大きく異なるため、あくまで考え方の目安としてご参考にしてください。
駅からの距離は、家賃だけでなく毎日の生活満足度にも大きく影響します。実際、通勤・通学の負担をかなり抑えられることから駅近物件はかなり人気です。最近は天気の悪い日も多いですが、雨が降っているときもスムーズに移動できるのは大きなメリットです。
しかし家賃が高くなりやすく、騒音や人通りの多さが気になる場合もあります。家賃や駅までの時間だけでなく、自分が何を優先するのかで選ぶことが大切です。
不動産広告の「徒歩◯分」表示、実は決まったルールがある
物件情報でよく見かける「駅徒歩5分」といった表示は、感覚的な数値ではありません。
不動産公正取引協議会連合会が定める『不動産の表示に関する公正競争規約』の施行規則により、道路距離80mを1分として算出することが決められています。1分未満の端数は切り上げるため、たとえば道路距離760mの物件は「徒歩10分」と表示されます。
目安となる換算は次のとおりです。
不動産広告の「徒歩◯分」表示目安表
この計算には、信号待ちや坂道による時間のロスは含まれていません。
そのため、地図上の徒歩分数と、実際に歩いたときの体感時間には差が出ることがあります。内見の際は、表示の分数だけで判断せず、実際に駅からの道のりを歩いてみることをおすすめします。
なお、同規約は2022年9月の改正により、朝の通勤ラッシュ時の所要時間を明示したうえで、平常時の所要時間を併記できるようになりました。
乗り換えが必要な場合は、その旨と乗り換えにかかる時間も含めて表示する決まりです。物件を比較する際は、この表示があるかどうかも確認しておくと、実際の通勤時間をイメージしやすくなります。
駅徒歩10分と書いてあっても、信号が1箇所しかなく、道が直線の場合は案外スムーズに歩けることも少なくありません。一方、徒歩5分でも信号が2箇所あり、信号待ちが長い場所であれば駅まで10分程度かかることもあります。駅までの道がずっと上り坂であれば、体力的なしんどさも大きいでしょう。
一番大事なのは、駅から歩いて実際にかかった時間をチェックすることです。ただし、信号の変わり方については時間帯によって異なるので、通勤・通学の時間に実際歩いてみるのがベストです。
家賃相場はどのくらい?全国平均の目安
総務省統計局『令和5年住宅・土地統計調査』によると、借家(専用住宅)の1か月当たりの家賃は全国平均で59,656円となっています。
内訳を見ると、民営借家(非木造)が68,548円、民営借家(木造)が54,409円と、建物の構造によっても差があります(2023年10月1日時点の調査)。
ただし、これはあくまで全国平均の「目安」です。実際の家賃は都市部か郊外か、駅からの距離、築年数、広さ、設備などの複数の条件によって大きく変動します。
同じ路線・同じ駅であっても、駅から近い物件と離れた物件とでは、家賃に差が生じるケースは珍しくありません。
候補となるエリアが決まったら、実際の物件情報を複数比較して、そのエリアなりの相場感をつかむことが実用的です。全国平均はあくまで大まかな水準を把握するための参考値としてご活用ください。
駅からの距離を選ぶとき、家賃以外に何を確認するか
国土交通省『令和6年度住宅市場動向調査報告書』では、民間賃貸住宅に入居した世帯が住宅を選んだ理由として「家賃が適切だったから」が最も多く挙げられ、次いで「住宅の立地環境が良かったから」「交通の利便性が良かったから」が上位に位置づけられています。
家賃と並んで、立地や交通の利便性も重視されていることがうかがえます。
駅からの距離を検討する際は、次のような点を確認しておくと、後悔の少ない選び方につながります。
- 徒歩分数の表示だけでなく、実際の道のりを歩いて確認する(坂道・信号・街灯の有無など)
- 通勤ラッシュ時の所要時間表示があるかを確認する(平常時との差を把握する)
- バス便・自転車・カーシェアなど、徒歩以外の移動手段も含めて総所要時間を比較する
- 在宅勤務の頻度が高い場合は、出社日数に応じて駅距離の優先度を見直す
- 家賃だけでなく、共益費・管理費・更新料などの総費用で比較する
- 治安や周辺の生活利便施設(スーパー・病院・保育施設等)も含めて総合的に判断する
駅までも大切ですが、最寄りのスーパーやコンビニまでの道のりも大切です。これは実際の体験談ですが、最寄りのスーパーまでの間に待ち時間の長い信号を挟む場合、最初は「頑張って自炊するぞ!」と思っても、買い物にいくのが段々面倒になりがちです。
また、駅に行く途中の道にコンビニがあるかどうかも重要です。「出社前に何か買って行こう」と思っても、駅までの道のりにコンビニがなければ、忙しい朝に遠回りしてから出社することになります。
自分の生活スタイルを考えたうえで、できる限り負担の少ない物件を選びましょう。
駅距離と家賃を比較する4つのステップ
「駅から近い物件」と「家賃を抑えた物件」のどちらを選ぶべきか迷ったときは、次の順序で比較すると判断しやすくなります。
- ステップ①:候補となるエリアを2〜3つに絞る まず、通勤・通学先へのアクセスや生活動線をもとに、候補エリアをいくつかピックアップします。
- ステップ②:同じ間取り・築年数帯で駅距離の異なる物件を並べる 同じエリア内で、「駅徒歩5分以内」と「駅徒歩10分以上」など、駅距離の異なる物件を、間取りや築年数の条件をそろえて比較します。
- ステップ③:家賃差と、追加でかかる移動時間・交通費を天秤にかける 駅距離を優先した場合と、家賃を優先した場合とで、毎月の家賃差と、通勤・通学にかかる時間や交通費の差を照らし合わせます。
- ステップ④:バス便・自転車置き場の有無を確認する 駅から離れた物件を検討する場合は、バス便の本数や自転車置き場の有無、雨天時の移動手段まで確認しておくと、日々の負担を具体的にイメージしやすくなります。
通勤・生活スタイル別に考える「駅距離」の優先度
一人暮らしを始める方や、通勤・通学の頻度が高い方にとっては、駅からの距離は毎日の負担に直結します。
一方で、在宅勤務が中心の方や、車・自転車での移動が主な方にとっては、駅距離よりも駐車場の有無や周辺環境を優先したほうが暮らしやすいこともあります。
また、家賃を抑えて貯蓄や趣味に回したいと考えている方は、駅から少し離れたエリアも候補に含めることで、選択肢が広がる場合があります。
その際は、バス便の本数や自転車置き場の有無など、駅までの移動手段も含めて確認しておくと安心です。
「駅から近いほど良い」「家賃が安ければ良い」と単純に決めるのではなく、自分の通勤・通学スタイルや暮らし方に合わせて、駅距離と家賃のバランスを考えることが、納得のいく物件選びにつながります。
駅距離をどのくらい優先するか、という問題については、かなり個人差があります。例えば駅まで徒歩20分でも、信号待ちが長くても全く気にならない人もいます。もちろん一般的には駅近が良いとされていますが、個人的に妥協できる部分に関しては妥協し、家賃を抑えるのもおすすめです。
ただし、同居している家族などがいる場合、その人の感覚も重要です。妥協できるポイントは人それぞれなので、子供も含めてその人個人の意見をしっかり確認しましょう。
まとめ
賃貸物件を選ぶときの「駅からの距離」と「家賃」の関係について整理しました。
不動産広告の徒歩分数には算出のルールがあり、実際の体感時間とは差が出ることがある点、家賃相場はあくまで全国平均の目安であり、エリアによって大きく変動する点を押さえておくとよいでしょう。
ご自身の通勤・通学スタイルや暮らし方に合わせて、無理のない範囲で物件を比較してみてください。
「駅近」は物件選びの一要素。自分の暮らしを総合的に考えて
ご利用にあたっての注意
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の物件・不動産会社・仲介業者の利用を推奨・勧誘するものではありません。記載の家賃相場・調査結果は執筆時点で公表されている公的統計に基づく目安であり、地域・時期・物件の条件により異なります。実際の物件選びにあたっては、最新の物件情報や地域の相場を不動産会社等でご確認のうえ、ご自身の判断で行ってください。
参考情報
株式会社モニクルリサーチが運営する経済メディア『LIMO』の住まい・暮らし領域『LIMO&ホーム』編集部。元金融機関出身者や元記者、専門資格保有者が住宅・お金・ガーデニングなどを解説する。
宅地建物取引士の資格を持ち、京都大学で都市・交通経済学を専攻。不動産・金融領域を中心にライターとして7年活動する。転居や街歩きの実体験も活かし、複雑な専門知識を初心者にも分かりやすく発信している。
物件選びでは、駅から近い物件が自分にとって正解とは限りません。家賃、通勤時間、周辺環境、防犯性、生活施設への距離を総合的に見て、自分や家族にとって負担の少ない物件を探すことが大切です。
内見時には実際に駅まで歩き、道の明るさや坂道、信号の多さも確認してみてください。無理のない予算内で、日々の暮らしやすさとのバランスを取りましょう。