この記事はここがポイント
- フラット35は全期間固定金利による返済額確定の安心感が特徴だが、金利の損得ではなく無理なく返せる資金計画全体での検討が重要視点。
- 住宅金融支援機構と民間金融機関提携の商品で、金利は借入時に確定し、団体信用生命保険の加入が任意である点が最大の特徴。
- 審査では返済負担率が年収の35%が目安となり、2024年2月13日開始の「子育てプラス」で最大年1.0%の金利引き下げ制度が用意。
住宅ローンを組むとき、多くの方が一度は「これから金利が上がったらどうしよう」という不安を抱くのではないでしょうか。
変動金利にするか、固定金利にするか——どちらを選ぶかによって、この先の返済計画の見通しは大きく変わってきます。
そうした選択肢のひとつが、住宅ローンの一種「フラット35」です。借入時点で返済終了までの金利が確定する仕組みですが、「変動金利と何が違うのか」「本当に自分に合うのか」「やめたほうがいいという声もあるが実際どうなのか」といった疑問を持つ方も少なくありません。
そこで今回は、大手住宅メーカーで38年、350棟を超える新築住宅の引き渡しを担当してきた住宅のプロに、住宅ローン「フラット35」について伺っていきます。
私は大手住宅メーカーの営業現場にて、さまざまなお客様の住まいづくりに関わってきました。その経験から感じることは、住宅ローン選びでは「どの金利が一番得なのか」「変動か固定か」だけを考えるのではなく、「その返済方法で、これからの暮らしを無理なく続けられるか」という視点が非常に重要だということです。
住宅はよく「人生最大の買い物」と言われます。目先の金利差だけを見ると、現時点では変動金利のほうが魅力的に感じられます。一方で、将来の金利上昇を心配しながら返済を続けるよりも、返済額が見通せる全期間固定金利には、それだけで大きな価値があります。フラット35を検討する際には、「金利が高い・安い」という単純な比較ではなく、家計の収支、教育費、老後資金なども含めて、自分たちにとってどの程度の安心を確保したいのかを考えて決めることが大切です。
フラット35とは|借りたときの金利がずっと変わらない住宅ローン
フラット35は、独立行政法人住宅金融支援機構(JHF)と民間の金融機関が提携して提供する、最長35年の住宅ローンです。
「全期間固定金利」という言葉のとおり、住宅金融支援機構によると、借入時点で返済終了までの金利と毎月の返済額が確定する仕組みが最大の特徴とされています。
申し込み・審査・融資の実務は民間の金融機関(銀行・信用金庫・モーゲージバンク等)が窓口となり、住宅金融支援機構が資金面で後ろ盾となる形で成り立っています。
そのため、同じ「フラット35」という商品名でも、取り扱う金融機関によって事務手数料や団体信用生命保険(団信)の取り扱いに違いがある点は押さえておきたいポイントです。
フラット35のメリット・デメリットを整理する
フラット35を検討するうえでは、メリットとデメリットの両方を客観的に押さえておくことが大切です。
メリットとして整理されている点
- 借入時に返済終了までの金利が確定するため、将来の返済額の見通しが立てやすい
- 市場金利が上昇した場合でも、返済額への影響を受けない
- 収入合算や親子リレー返済など、多様な世帯構成に対応した商品設計がある(詳細は各取扱金融機関で異なる)
デメリットとして整理されている点
- 借入時点の金利水準は、その時々の変動金利型商品と比べて高めに設定される傾向がある
- 対象となる住宅には、住宅金融支援機構が定める技術基準への適合や物件検査が必要
- 金融機関によって事務手数料や団信の保障内容が異なるため、比較検討に手間がかかる
「フラット35はやめたほうがいい」といわれる背景について このような声の多くは、借入時点での金利水準を変動金利型と比べた場合の印象に基づくものと考えられます。
ただし、どちらが有利かは借入期間・金利動向・家計の状況によって変わるため、一律に「やめたほうがいい」と言い切れるものではありません。
金利タイプの比較そのものについては、他の記事で詳しく整理していますので、本記事ではフラット35という制度自体の仕組みを中心にお伝えします。
なお、借入額や返済期間を入力して毎月の返済額を具体的に試算したい場合は、住宅金融支援機構が公式に提供している「【フラット35】ローンシミュレーション」で確認することができます。
特定の民間シミュレーターに限らず、まずは公式のツールで大まかな返済額のイメージをつかんでおくとよいでしょう。
【2026年8月時点】フラット35の金利水準の目安
フラット35の金利は毎月見直されており、融資を受ける期間によって水準が分かれています。
住宅金融支援機構「最新の金利情報」によると、2026年8月の資金受取分(融資率9割以下、新機構団信付きの場合)の金利水準は、次のとおりです。
2026年8月の資金受取分(融資率9割以下、新機構団信付きの場合)の金利水準
※2026年8月時点の目安です。金利は毎月見直されるため、実際の借入時には住宅金融支援機構の最新の金利情報ページで必ず現時点の水準をご確認ください。
なお、住宅金融支援機構によると、融資率(借入額が住宅価格に占める割合)が9割を超える場合や、団信に加入しない場合には、上記とは異なる金利区分が適用されます。
また、上表の「20年以下」は【フラット20】、「36年以上50年以下」は【フラット50】に区分される商品であり、【フラット50】は長期優良住宅等の認定を受けた住宅であることが利用条件となります。
具体的な差は金融機関ごとに設定が異なるため、個別の見積もりで確認することが必要です。
審査で見られる主なポイントと団信の考え方
フラット35の審査では、年収に占める年間の返済額の割合を示す「返済負担率」が重要な基準のひとつとされています。
あわせて、対象となる住宅が住宅金融支援機構の定める技術基準に適合しているかどうかを確認する「物件検査」も必須の手続きです。
団体信用生命保険(団信)については、フラット35では民間金融機関の住宅ローンと異なり、加入が任意とされている点が特徴です。
団信に加入する場合と加入しない場合とで金利が異なる仕組みになっており、保障内容と金利のバランスは、取扱金融機関ごとに確認する必要があります。持病などの事情で一般的な団信に加入しにくい方向けの保障プランを用意している金融機関もあるため、個別の相談窓口で確認するとよいでしょう。
住宅ローンについて知っておくべき「審査基準」がいくつかあります。
・返済負担率が最重要で年収の35%位までが目安。見落としがちなのが「他の借入も含めた総返済額」つまり「車のローン」や「カードのキャッシング枠(未使用でも)」が盲点です。
・勤続年数3年以上の正社員が有利。もし転職・独立の予定があるなら、ローン審査を先にするのも一手。個人事業主でも確定申告の実績2〜3期分あれば審査対象になります。
・住宅ローン仮審査の複数申込みも控えるべき。短期間の同時申込履歴が信用情報に残り、いわゆる「申込みブラック」のリスクになります。
・記事中にある「団信が任意加入」という点はフラット35の特別なポイント。そもそも民間金融機関は団信加入が必須条件なため、持病のためローン自体が組めないケースも多いです。
子育て世帯・若年夫婦向けの「フラット35子育てプラス」
住宅金融支援機構は、子育て世帯や若年夫婦世帯を対象に、一定期間の借入金利を引き下げる『フラット35子育てプラス』を設けています。
住宅金融支援機構の発表によると、この制度は2024年2月13日の資金受取分から開始されました。
対象となるのは、借入申込年度の4月1日時点で18歳未満の子(胎児・孫を含み、孫の場合は同居が要件)を有する「子育て世帯」、または借入申込年度の4月1日時点で夫婦のいずれかが40歳未満である「若年夫婦世帯」(同性パートナーを含む)です。
子どもの人数や住宅の性能等に応じて金利引き下げのポイントが加算され、1ポイントにつき当初5年間、年0.25%の金利引き下げが受けられる仕組みとされています。制度拡充により、最大の引き下げ幅は年1.0%まで広がっています。
子育てプラスの金利引下げ内容(世帯区分別)
対象要件や引き下げ幅の詳細は、住宅取得のタイミングによって内容が変わる可能性があるため、申し込み時点で改めて公式情報を確認することをおすすめします。
借り換え・繰り上げ返済を検討する際の視点
すでに変動金利型の住宅ローンを利用していて、フラット35への借り換えを検討する場合には、借り換え時の事務手数料や登記費用などの諸費用と、金利差によるメリットを比較する必要があります。
また、繰り上げ返済についても、金融機関によって手数料の有無や最低返済額の条件が異なります。
いずれも「得か損か」を一般化して断定できるものではなく、現在の借入残高・返済期間・家計の状況に応じて、取扱金融機関やファイナンシャルプランナーに具体的な試算を相談することが実務上の近道です。
選び方の視点:資金計画全体の中でどう位置づけるか
住宅メーカーで長年、住宅取得の現場に立ち会ってきた住宅のプロに聞くと、フラット35を選ぶかどうかは、金利タイプ単体の損得だけで判断できるものではない、といいます。
頭金の額、毎月の返済負担率、団信の保障内容、そして将来の教育費やライフイベントまで含めた資金計画全体の中で、「返済額が確定している安心感」をどの程度重視するかという判断軸で考えることが実務的には近道とのことです。
なお、全期間にわたって金利が変動しない住宅ローンという選択肢自体、国や金融制度によって位置づけが異なります。
海外の住宅金融の現場にも携わってきた経験から見ると、借入時点で長期間の金利を固定できる制度が整っていること自体、日本の住宅ローンの特徴のひとつだといえるそうです。
まとめ
フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する全期間固定金利の住宅ローンです。返済額が確定する安心感がある一方、借入時点の金利水準や物件の技術基準など、事前に確認しておきたい点も複数あります。
子育て世帯・若年夫婦向けの金利引き下げ制度も用意されているため、該当する可能性がある方は条件を確認してみるとよいでしょう。
金利タイプの選択は、目先の水準だけでなく、頭金や返済負担率を含めた資金計画全体の中で検討することをおすすめします。
ご利用にあたっての注意
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融機関や商品の契約を推奨・勧誘するものではありません。記載の金利水準・制度内容は執筆時点(2026年8月時点のデータを含む)の目安であり、実際の金利は毎月見直され、条件によっても異なります。最新の金利・制度内容は住宅金融支援機構の公式情報でご確認いただき、借入額やご自身の返済計画については、取扱金融機関またはファイナンシャルプランナー・税理士等の専門家にご相談のうえ、ご自身の判断で行ってください。
参考情報
元新聞記者。ガーデニング、インテリア、植物、DIYなどの記事を執筆。華道(池坊 師範科助教・華掌)、フラワーアレンジメントにのべ10年間励み、専門的視点から解説する。一種外務員資格、行政書士試験合格。
大手住宅メーカーで38年間勤務。350棟超の住まいづくりに立ち会い、国内の住宅営業・支店運営から、海外法人の経営、都市開発まで経験。住文化や住宅事情を知る実務家として、住まいを暮らしの視点から解説。
住宅ローンは「家を買うためのお金」というより、「その家でこれから何十年も暮らしていくための生活設計の一部」だと考えています。フラット35は、金利上昇による返済額の変化を心配せず、将来の資金計画を立てやすいことが大きな特徴です。
もちろん、変動金利でも急激な返済増を緩和する仕組み(5年ルールや125%ルールなど)で守られています。しかし将来の金利上昇リスクを避けたい方や、毎月の返済額を長期にわたり確定したい方にとって、固定金利は有力な選択肢です。
このように固定金利の安心感ばかりが注目されがちですが、大切なのは「フラット35が良いか悪いか」ではなく、自分たちの収入・資産・ライフプランに照らして、どの住宅ローンなら安心して暮らし続けられるかを考えることです。住宅ローンの大原則は、借りられる額ではなく「無理なく返せる額」を基準に選ぶことです。長年住宅の現場を経験してきた立場からそのことを強くおすすめします。