この記事はここがポイント
- 不動産売却で税金がゼロ円でも、特例控除には確定申告必須。
- マイホーム売却は要件次第で譲渡所得から最高3,000万円控除、「3,000万円特別控除」適用。
- 仲介手数料は国土交通大臣告示の上限、高値売却にはレインズ登録依頼が重要。
「不動産を売ったら、いったいいくら税金がかかるのか」——住み替えや実家の売却を検討し始めると、こうした疑問が真っ先に浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
マイホームの買い替えでも、相続した実家の処分でも、「税金」と「確定申告」の壁を前に足が止まってしまう方は少なくありません。
そこで今回は、大手住宅メーカーで38年、350棟を超える新築住宅の引き渡しを担当し、宅地建物取引士の資格も持つ住宅のプロに、不動産売却にかかる税金の仕組み、確定申告の要否、仲介手数料の目安について伺っていきます。2026年9月時点・令和7年分の公式情報をもとに整理していきます。
不動産の売却では、「いくらで売れるか」に目が向きがちですが、実際の売却現場では、売却価格だけでなく、税金や仲介手数料、登記費用などを差し引いた「最終的に手元にいくら残るのか」まで考えておくことが大切です。制度や仕組みの基礎は知っておくことは重要なことだと、心に留めておいてください。
個人の売主に対して、私がもっとも重要だと思うことは「決してひと任せにしない」ことです。不誠実な業者への対応や、個人の売主が知らないうちに不利益を被りやすい仕組み、日本特有の不動産取引の問題点などを知ることが、後悔しないための大事なポイントです。
あなたにとって人生最大の出来事のひとつかもしれない、相続した実家を売るときの不動産業者との関わり方、一般にはあまり知られていない実状なども最後に紹介します。
不動産を売ったらどんな税金がかかる?
不動産を売却して利益(譲渡益)が出た場合、その利益は「譲渡所得」として所得税・住民税の課税対象になり得ます(出所:国税庁「令和7年分譲渡所得の申告のしかた」、2026年9月時点)。
「利益が出なければ税金もかからないのでは」と思われるかもしれませんが、実は損失が出た場合や特例で税額が0円になる場合でも、控除の適用を受けるには確定申告が必要になることが多い、という点は見落とされがちです。
確定申告は必要?マイホームなら「3,000万円特別控除」も
「利益が出たら必ず確定申告しなければならないのでしょうか」というご質問もよく受けます。原則として、譲渡益が出た場合は確定申告が必要です。
国税庁によると、マイホーム(居住用財産)を売却した場合には、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例が用意されています。
ただし、この特例は「現に住んでいる家」または「住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る家」であることに加え、売った年の前年・前々年に同じ特例や買換え特例を利用していないこと、親子・夫婦など特別な関係にある人への売却でないことなど、細かな要件が定められています。
要件を満たせば適用され得るものであり、ご自身のケースに当てはまるかどうかは一律には言えないという点は、あらかじめ知っておいたほうがよいかもしれません。
なお、この特例と住宅ローン控除は、一部条件を除き併用できないとされています。
特例を使って税額が0円になる場合でも、適用を受けるには確定申告が必要です。「税金がかからないなら申告しなくていい」というわけではない点は、誤解しやすいポイントといえるでしょう。
ちなみに、令和7年分の確定申告期間は2026年2月16日から3月16日まででした。次の令和8年分の申告は2027年2月中旬頃から始まる見込みですが、時期は毎年あらためて発表されるため、確定申告シーズンが近づいたら国税庁の案内をご確認ください。
確定申告の必要書類はどうそろえる?
確定申告の際には、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)や、売買契約書の写し、登記事項証明書の写しなどが必要とされています。
不動産の譲渡所得は他の所得と合算せず分離して税額を計算するため、確定申告書の第一表・第二表に加えて、分離課税専用の第三表もあわせて作成・提出する必要がある点にも注意が必要です。
書類の様式は税務署の窓口や、国税庁の確定申告書等作成コーナーで入手できます。ご自身のケースでどの書類が必要になるかは個々の事情によって異なるため、詳細は国税庁のウェブサイトや税務署への確認をおすすめします。
仲介手数料はいくらかかる?
売却を仲介会社に依頼する場合、仲介手数料も気になるところでしょう。国土交通省「宅地建物取引業法関係」によると、仲介手数料には、宅地建物取引業法に基づく国土交通大臣告示による上限が設けられています。
- 400万円を超える物件:「売買価格×3%+6万円」(+消費税)という速算式が上限の目安(2026年9月時点・目安)
- 800万円以下の低廉な物件:2024年7月の法改正により、仲介手数料の上限が30万円+消費税(税込33万円)に引き上げ
売買価格帯の仲介手数料
空き家など価格が低めの物件を売却する場合、この特例が関係してくる可能性があります。「仲介手数料は必ずこの金額になる」というものではなく、あくまで法律上の上限です。実際の金額は依頼先によって異なる場合があるため、契約前に見積もりで確認しておくと安心です。
売却の流れと、その他にかかる費用
不動産売却は、おおむね次のような流れで進みます。
- 不動産会社に査定を依頼する
- 媒介契約を結ぶ
- 売却活動(広告・内覧対応等)を行う
- 買主と売買契約を結ぶ
- 引き渡しを行う
仲介手数料のほかにも、売買契約書に貼付する印紙税や、抵当権抹消登記等にかかる登録免許税・司法書士報酬など、諸費用がかかります。売却にかかる期間も、物件の状況や市況によって数か月から半年以上と幅があり、一概には言えません。「思ったより早く売れた」という方もいれば、「なかなか買い手が見つからない」という方もいるでしょう。
なお、「不動産売却 どこがいい」と業者選びに悩む方もいらっしゃいますが、特定の会社を一律におすすめすることはできません。
複数の不動産会社に査定を依頼して条件を比較する、過去の取引実績を確認するといった一般的な観点で、ご自身に合った依頼先を検討することをおすすめします。
相続した実家を売る場合、気をつけたいこと
相続した実家や空き家を売却する場合、譲渡所得の計算に使う「取得費」の扱いに悩む方も多いのではないでしょうか。
取得費とは、その不動産をもともと取得した際にかかった金額のことで、相続の場合は被相続人が取得した当時の金額を引き継ぐのが原則です。
購入時の契約書等が見当たらず取得費が分からないケースもあり、その場合は売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」という考え方もあります。ただし概算取得費を使うと実際の取得費より低く計算され、譲渡益が大きく出て税負担が増えることもあるため、古い書類が残っていないか、まずは探してみることをおすすめします。
また、相続不動産の売却には、相続登記が済んでいることが前提になる点にも注意が必要です。相続登記がまだの場合は、先にそちらの手続きを進める必要があります。相続に関する税務・登記の判断は個々の事情によって大きく異なるため、税理士や司法書士に相談しながら進めるとよいでしょう。
まとめ
不動産売却にかかる税金・確定申告・仲介手数料について整理しました。譲渡益が出た場合の課税、マイホーム特例の適用要件、確定申告が特例適用時にも必要になる点、仲介手数料の上限の考え方は、特に押さえておきたいポイントです。
実際にかかる税額や費用はご自身の状況によって大きく変わりますので、この記事を参考にしながら、税理士や不動産会社への相談も含めて検討を進めていただければと思います。
ご利用にあたっての注意
本記事は情報提供を目的とした一般的な解説であり、特定の不動産会社・仲介業者の利用や契約を推奨・勧誘するものではありません。記載の税制・控除・手数料の上限は2026年9月時点(令和7年分)で確認できた公式情報に基づく目安であり、今後の税制改正等により変更される可能性があります。税額の計算や特例の適用可否は個々の事情によって異なるため、最新の情報や個別のご事情については、税理士・税務署・宅地建物取引士等の専門家へのご相談のうえ、ご自身の判断で手続きを進めてください。
参考情報
株式会社モニクルリサーチが運営する経済メディア『LIMO』の住まい・暮らし領域『LIMO&ホーム』編集部。元金融機関出身者や元記者、専門資格保有者が住宅・お金・ガーデニングなどを解説する。
大手住宅メーカーで38年間勤務。350棟超の住まいづくりに立ち会い、国内の住宅営業・支店運営から、海外法人の経営、都市開発まで経験。住文化や住宅事情を知る実務家として、住まいを暮らしの視点から解説。
不動産業界では暗黙の事実なのですが、あなたが土地を売るときに、不動産業者は説明してくれない不都合な真実をお教えします。
不動産の売却を考える際、「片手取引」と「両手取引」という言葉を知っておくと、仲介業者の動きが理解しやすくなります。片手取引とは、売主と買主がそれぞれ別の業者に仲介を依頼する形です。一方、両手取引は、同じ業者が売主と買主の双方を仲介する取引をいいます。仲介業者は、手数料を双方から受け取れる両手取引(倍の収益性)を当然のことながらめざします。
売主は「できるだけ高く売りたい」、買主は「できるだけ安く買いたい」という利益相反の立場にあります。そのなかで、業者が主導して双方の仲介を担う両手取引に誘導することが、両手取引の問題点といわれます。
特に注意すべきは「囲い込み」です。これは売主からの依頼物件を、自社で買主を見つけて両手取引にすることを優先し、他社からの購入希望者の紹介を事実上妨げるような行為です。売主にとっては、売却機会を狭めることになります。
そこで重要になるのが「レインズ」です。これは不動産会社間で物件情報を共有するシステムで、登録物件は他社も検索できるので、売却情報を広く市場に公開することになります。
紙面の都合で詳しく説明できませんが、あなたが相続した実家を売却するときなど、業者に「レインズに載せてください」とひとこと伝えてみてください。
レインズ=業者も思わず一目置く魔法の言葉、と覚えておいて損はありません。
さらに、「登録状況や他社からの問い合わせにどう対応しているのか」まで確認すれば、業者にとっても、適切な販売活動を促す一言になります。
また、一般媒介契約なら複数の不動産会社に売却を依頼できます。会社選びに迷う場合には、複数社の査定や販売方法を比較することも有効です。
ちなみに米国など海外では、州によって両手取引に規制を設けているケースがあります。日本では業者有利の利益相反が生じる仕組みが残されていますが、今後は売主・買主それぞれの利益を守りながら、取引の透明性を確保する仕組みに日本も変わっていくべきだと思っています。
不動産売却では「査定価格が高かったから」という理由だけで仲介会社を決めるのではなく、どのような販売活動を行い、どのように買主を探すのかまで確認することが、後悔せず納得のいく売却への第一歩です。