この記事はここがポイント
- 平屋は基礎や屋根の面積が広く割高になりやすいため本体・付帯・諸費用・土地の総額での判断。
- 公的統計の資金目安は2025年度フラット35調査で建物のみ4,262万円、令和7年度調査で土地付中央値5,100万円。
- 3年半額の新築住宅に係る固定資産税の減額措置や足場代を抑えやすい外装メンテナンス費などの維持費の考慮。
平屋を建てたいと考えたとき、まず気になるのは「結局いくらかかるのか」ではないでしょうか。
広告やカタログに並ぶ坪単価を見て予算を組んだものの、見積もりを取ると想定より高くなった、という声は少なくありません。平屋は構造上、二階建てより坪単価が高くなりやすいとされますが、それだけで損得は決まりません。
そこで本記事では、公的統計で確認できた費用の目安、坪単価の読み方、平屋が割高になりやすい理由、そして維持管理面のコストメリットを整理します。
土地・建物・諸費用を合わせた「総額」で比べる考え方を、順を追ってご紹介します。なお、数値は2026年10月時点で確認できた範囲の目安です。
平屋を建築するお客様のなかには、二階建てより建築費が高くなることを理解したうえで、「平屋で暮らしたい」という明確な希望をお持ちの方がいます。特に都内のように土地の価格が高いエリアでは、限られた敷地にどのような住まいを実現するかが大きな課題になります。
一般的に建築工事の見積書は、基礎や外壁の長さ、屋根の広さなど、施工費用のほかにも建築資材すべての総量を計算して見積書が作成されます。専門的には数量積算と言います。同じ延床面積でも、平屋は二階建てよりも基礎や屋根の面積が大きくなりやすく、その分、建築費が高くなります。もちろん、建物の形状や仕様によっても異なりますが、こうした構造上の違いが坪単価に反映されることになります。
この、坪単価という言葉について知っておくべきことは、これは単位面積当たりの建築コスト比較のための、単なる指標であるということです。つまり、その建物建築の総コストを延床面積で割り算しただけの数値ですので、有効性も少なくあまり気にする必要のない考え方でもあります。本記事の、平屋の建築コストで詳しく説明していますが、この点について検討を重ねることが、平屋の強みと弱みを解明する鍵でもあります。
一方で、平屋には生活動線をまとめやすく、将来の暮らしやすいという魅力があります。建築時の費用だけでは測れない価値も含めて、検討する必要があるでしょう。
公的統計でみる注文住宅の費用の目安【2026年時点】
まず、平屋に限らない注文住宅の数値を確認します。平屋だけを切り出した公的な相場は、執筆時点で確認できていません。
以下はあくまで平屋に限らない注文住宅の参考値で、土地代を含むかどうかで数値が大きく異なる点にご注意ください。
- 国土交通省によると、令和7年度住宅市場動向調査(令和6年度に住み替え・建て替え・リフォームを行った世帯が対象)で、土地を購入して注文住宅を新築した世帯の購入資金(土地代を含む)の平均値は7,646万円、中央値は5,100万円でした。
- 住宅金融支援機構によると、2025年度のフラット35利用者調査(2025年4月〜2026年3月の承認案件のうち、借換えを除く35,553件が対象)で、所要資金の平均は、土地を取得せず建物だけを建てる注文住宅が4,262万円、土地取得費を含む土地付注文住宅が5,313万円でした。
公的統計でみる注文住宅の費用の目安
数値に開きがある主な理由として、土地代を含むかどうかに加え、調査対象(フラット35利用者に限るか等)や地域・集計方法の違いがあります。
国土交通省の7,646万円は土地を購入した世帯の土地代込みの金額で、フラット35の「注文住宅」4,262万円は土地を取得しない建物だけの金額です。
また、平均値は一部の高額な事例に引っ張られやすく、国土交通省の調査では中央値(5,100万円)が平均値を大きく下回っています。
単純に並べて「相場はこれ」と読むのではなく、「土地の有無や条件で、総額は大きく変わる」ことを示す参考値と捉えるのが現実的です。
ご自身の条件に近い数値は、各調査の公式資料でご確認ください。
坪単価の読み方|「本体価格÷面積」の面積が会社ごとに違う
坪単価は、一般に「建物の本体価格÷面積(坪)」で表されます。
ただし、割る面積が延床面積なのか施工面積なのかで数値が変わります。また、広告の坪単価が本体工事費のみを指している場合もあります。
説明のための仮の計算例を示します(実際の相場ではありません)。
- 本体工事費2,400万円、延床面積30坪の場合:坪単価は80万円
- 同じ本体工事費でも、施工面積(ポーチやバルコニー等を含む)35坪で割ると:坪単価は約69万円
このように、同じ建物でも算出方法で見え方が変わります。坪単価は会社同士を比べる指標としては不向きで、あくまで目安と考えておくと安心です。
比べるときは、面積の定義と、何が含まれる価格かを必ず同じ条件にそろえてください。
平屋は坪単価が割高になりやすい?構造上の理由を整理
平屋の坪単価が高めになりやすいとされる理由は、主に建築の仕組みにあります。
ただし、公的統計で平屋と二階建ての価格差を示す数値は確認できていないため、以下は一般的な傾向としてお読みください。
- 基礎と屋根の面積が大きくなりやすい:同じ延床面積なら、二階建ては基礎と屋根の面積が小さくなりやすい傾向があります。平屋は1階部分にすべてを収めるため、基礎・屋根の面積が大きくなりがちです。
- 敷地が広く必要になりやすい:建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)の制限があるなかで、1階だけで延床面積を確保するため、土地代が膨らむ可能性があります。
- 外構や付帯工事の範囲が広がることがある:建築面積が広い分、地盤改良や外構の範囲が広がる場合があります。
現場では、建物本体の見積もりは二階建てと大差なくても、土地代を含めた総額で差が広がるケースを見かけました。
坪単価の差より、土地代を含めた総額での差のほうが判断に効いてくることが多いと感じます。
総額は4つに分けて考える|本体・付帯・諸費用・土地
費用は次の4つに分けて整理すると、見落としが減ります。
4つの費用
坪単価の安さだけで選び、付帯工事や諸費用を見落として予算を超えてしまう例は、よく耳にします。
土地の地盤、用途地域、建ぺい率・容積率によっては、想定外の費用が発生することもあります。建築士や工務店に、土地の条件を含めて確認してもらうことをおすすめします。
割高でも見合う?平屋のコスト面のメリットを条件付きで整理
建築費が高めでも、条件次第で費用面のメリットが出る場合があります。いずれも断定はできず、建物の形や仕様、地域で変わる点にご留意ください。
- 階段や二階の水回り配管が不要:間取りが簡素になり、将来の階段の上り下りの負担も抑えられます。
- 外装メンテナンスの足場が小規模で済みやすい傾向:二階建てより作業の高さが低い分、足場代を含む屋根・外壁の工事費を抑えやすい場合があります。
- 構造が単純になりやすい:形状や設計次第で、耐震面の検討がしやすいとされます。
一方で、屋根や外壁の面積が広い分、塗装や葺き替えの費用がかかる面もあります。メンテナンス費は、面積・材料・工法で決まるため、複数社に同じ条件で見積もりを依頼して比べると判断しやすくなります。
建てた後の維持費|固定資産税と修繕費の考え方
建てた後にかかる費用も、総額の一部です。固定資産税と都市計画税は、土地と建物それぞれに課されます。
国土交通省や自治体の案内によると、新築住宅には『新築住宅に係る固定資産税の減額措置』があり、一般の住宅で3年間、固定資産税が2分の1に減額されます(令和8年4月1日以降に新築した場合は居住部分の床面積が40㎡以上240㎡以下などの要件があり、減額の対象は床面積120㎡相当分まで。適用期限は令和13年3月31日、2026年時点)。
この措置は地方税法の規定に基づくもので、4年目から税額が元に戻る点には注意が必要です。なお、都市計画税はこの減額の対象外です。
また、国土交通省の案内では、令和11年4月1日以降に新築する住宅のうち、一定のハザードエリアなどの特定区域内にあるものは適用対象外とされています。土地選びの段階で確認しておくと安心です。
減額の対象や税額は、お住まいの自治体や家屋の条件で変わります。具体的な税額は、市区町村の資産税担当窓口へご確認ください。
このほか、屋根・外壁・設備の修繕費、光熱費、火災・地震保険料なども、長い目で見て予算に組み込んでおきたい項目です。
費用を抑えるための4つの工夫
- 形をシンプルにする:凹凸の少ない四角に近い形状は、一般に外壁・屋根の面積や施工の手間を抑えやすいとされます。
- 間取りを簡素にする:廊下を減らし、部屋数を絞ると、面積と費用の両方に効いてきます。
- 延床面積を見直す:本当に必要な広さを整理します。コンパクトな平屋は、必ずしも割高とは限りません。
- 仕様に優先順位をつける:断熱・耐久など長く使う部分を優先し、後から変えやすい部分は抑える、という考え方です。
特定の会社や商品を前提にせず、同じ条件で複数社の見積もりを取って比べることが基本です。
資金計画の注意点|上限ぎりぎりで組まない
予算は、借りられる上限から逆算せず、余裕を持って組むことが大切です。
建築資材や人件費は変動し、国土交通省の令和7年度住宅市場動向調査でも、注文住宅取得世帯が住宅に満足していない点として最も多く挙げたのは「価格(予定より高くなった)」(36.1%)でした。
住宅ローンの返済額と、将来の教育費や老後資金とのバランスも確認が必要です。住宅ローン控除などの制度は、適用要件や金額が年度で改正されます。
2026年時点の内容は、国土交通省「住宅ローン減税」や国税庁の案内で最新情報をご確認ください。個別の資金計画は、ファイナンシャルプランナーや金融機関にご相談いただくことをおすすめします。
まとめ|坪単価ではなく「総額と暮らし」で比べる
平屋の費用について、ポイントを整理しました。
- 坪単価は面積の定義で変わるため、会社同士を比べる指標としては目安にとどめる
- 平屋は基礎・屋根の面積や敷地の面で、割高になりやすい傾向がある
- 本体・付帯・諸費用・土地の4つに分け、総額で比べる
- メンテナンスのしやすさなど、条件次第で得られる費用面のメリットも併せて考える
ご自身の土地や家族構成によって、最適な答えは変わります。総額と、住み続けた後の費用まで含めて比べることが、判断のポイントになるのではないでしょうか。
契約や手続きを進める際は、建築士・宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナーなどの専門家にも相談しながら進めていただければ幸いです。
平屋と二階建てのどちらがよいか?後悔のない住まいづくりに大切なこと
ご利用にあたっての注意
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の商品・サービス・業者の購入や契約を推奨・勧誘するものではありません。記載の費用・制度・仕様は2026年時点の目安であり、地域・条件・時期により異なります。最新の情報や個別のご事情については、公式情報の確認および専門家(税理士・司法書士・弁護士・建築士・宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナー・各自治体の窓口 等)へのご相談のうえ、ご自身の判断で行ってください。
参考情報
株式会社モニクルリサーチが運営する経済メディア『LIMO』の住まい・暮らし領域『LIMO&ホーム』編集部。元金融機関出身者や元記者、専門資格保有者が住宅・お金・ガーデニングなどを解説する。
大手住宅メーカーで38年間勤務。350棟超の住まいづくりに立ち会い、国内の住宅営業・支店運営から、海外法人の経営、都市開発まで経験。住文化や住宅事情を知る実務家として、住まいを暮らしの視点から解説。
私は住宅メーカーの社員として、海外の数ヵ国で住宅事業に携わった経験があります。住宅建築の見積内訳については、いつも詳細にチェックをしていましたが、オーストラリアに赴任した当初、現地の見積明細を見て違和感を覚えたことがありました。日本の見積書では一般的な「仮設工事」、特に高所作業用の足場工事の項目が見当たらなかったのです。
私が赴任したシドニー郊外では、住宅エリアのほとんどが平屋であり、住まいづくりは平屋がスタンダードです。現地社員たちに「日本では平屋の新築は10%程度だ」と話すと、「将来、外壁塗装や屋根のメンテナンスをするとき、平屋なら脚立などで対応できるのに、なぜ日本では平屋の人気がないのか」という趣旨の話が返ってきました。
もちろん、住宅事情や施工方法、法令などが異なるため、単純な比較はできません。しかし、新築時だけでなく、将来の維持管理まで含めて考えることも大切だと改めて感じました。平屋のコストを考えるうえでも、初期費用とメンテナンス費用の両面から比較する視点が欠かせません。「平屋のコスト」というテーマのこの記事について、コスト視点での答えの切り口がここにあるような気がします。
平屋と二階建てのどちらがよいかは、単純な価格の比較だけでは決められません。ご自身やご家族が、将来にわたってどんな暮らしと住まい方をしたいのか。その希望と予算など、何を大切にしてバランスを取るのかということが、後悔のない住まいづくりにつながると思います。