この記事はここがポイント
- エンディングノートに法的効力はなく、遺産相続など法的効力が必要な場合は遺言書作成が必須
- 資産やパスワードなど重要情報は保管注意、年に一度の見直しで家族負担を軽減
- 自治体や無料テンプレート、アプリで入手可能、年齢問わず思い立った時の開始が推奨
「エンディングノートを書いておいたほうがいいと聞くけれど、遺言書と何が違うのだろう」——そう感じたことはないでしょうか。
「終活」という言葉が広まり、書店や100円ショップでもエンディングノートを見かけるようになりましたが、実際に何を書けばよいのか、法的にどんな意味を持つのか、分かりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。エンディングノートは万能ではないものの、家族の負担を減らすうえで役立つ場面があります。
そこで今回は、エンディングノートと遺言書の違い、書くべき内容、無料で手に入れる方法を、順を追って整理してご紹介します。
法務の基礎を学んできた立場からも、エンディングノートには法的な効力がないという記事の指摘は、重要な整理だと感じます。ここでは、エンディングノートと遺言書にはそれぞれどのような内容が記載されるのか、一次情報をもとに丁寧に解説していきます。
エンディングノートに法的効力はあるのでしょうか
結論から言うと、エンディングノートには法的な効力がありません。あくまで、自分の希望や情報を家族に伝えるための「お願い」にとどまるものであり、書いてある内容に相続人が従う法的な義務はない、という点は押さえておきたいところです。
一方、遺言書(民法上の要件を満たした自筆証書遺言や公正証書遺言)は、方式を満たしていれば法的な効力を持ちます。
たとえば「誰にどの財産を相続させるか」を確定させたい場合は、エンディングノートではなく遺言書を用意する必要がある、ということになります。
なお、自筆証書遺言については、法務局が原本を預かる「自筆証書遺言書保管制度」(2020年に始まった制度)を利用する方法もあります。
自筆証書遺言書保管制度の流れ
この制度を使うと、家庭裁判所での検認手続きが不要になるといったメリットがあります。
財産の分け方など、法的な効力を持たせたい希望がある場合は、エンディングノートとあわせて、遺言書の作成も選択肢に入れておくとよいのではないでしょうか。
エンディングノートには何を書けばいいのでしょうか
「何を書けばいいか分からず、結局手をつけられていない」という声もよく耳にします。決まった書式はありませんが、一般的には次のような項目が挙げられます。
一般的にエンディングノートに書かれる事項
すべてを一度に埋めようとすると負担に感じてしまうこともあるため、書ける項目から少しずつ埋めていくくらいの気持ちで取り組むのがおすすめです。
なお、資産情報やパスワードといった重要な情報を書く場合は、ノートの保管場所には注意が必要です。誰でも見られる場所に置いておくと、紛失や第三者による閲覧のリスクにつながります。
家族の中で信頼できる人に「どこに保管しているか」だけを伝えておく、という工夫も考えられるでしょう。
無料で手に入れる方法はあるのでしょうか
エンディングノートは、書店や100円ショップで購入できるほか、無料で入手する方法もいくつかあります。
- 自治体窓口・自治体公式サイト:市区町村によっては、独自にエンディングノートを作成し、窓口での配布やホームページからのダウンロードに対応しているところがあります。ただし、配布の有無や内容は自治体によって異なるため、お住まいの自治体の高齢福祉担当窓口や公式サイトで確認するとよいでしょう。
- 無料テンプレートのダウンロード:インターネット上で配布されている無料テンプレートを使う方法もあります。
- アプリ:スマートフォンのアプリで作成・管理できるタイプもあります。
どの方法であっても、内容や更新のしやすさには違いがあるため、ご自身やご家族に合った形式を探してみてくださいね。
書き始めるタイミングはいつがいいのでしょうか
「まだ元気だから早すぎるのでは」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、エンディングノートは年齢や健康状態にかかわらず、思い立ったときに始めるのがよいとされています。
実際、若い世代向けの情報を求める方がいらっしゃるように、20〜30代であっても、もしものときに備えて連絡先やSNSアカウントの情報を整理しておきたいというニーズは少なくありません。
高齢の親に勧める場合も、「終活」という重い言葉ではなく、「もしものときに困らないための備え」として切り出すと、抵抗感が和らぐのではないでしょうか。
書いた後の見直しや保管はどうすればいいでしょうか
エンディングノートは決まったタイミングで見直す習慣を
エンディングノートは一度書いたら終わり、というものではありません。引っ越しや口座の解約、家族構成の変化など、状況は年月とともに変わっていきます。年に一度、誕生日や年末など決まったタイミングで見直す習慣をつけておくと、内容が古いままになるのを防ぎやすくなります。
保管場所についても工夫の余地があります。金庫や鍵付きの引き出しに保管して家族に保管場所だけを伝えておく、あるいは資産・パスワードなど特に重要度の高い情報は別紙にまとめて分けて保管する、といった方法も考えられます。
「誰に見つけてほしいか」「いつ見てほしいか」を意識しながら、ご自身に合った保管方法を選んでいただくとよいでしょう。
また、相続の場面では、エンディングノートに資産の一覧をまとめておくと、遺された家族が金融機関や保険会社への連絡先を探す手間を減らせる、という実務的なメリットもあります。
実際に遺品整理を行う際も、資産の一覧が分かっていると業者選びや手続きがスムーズになります(詳しくは[遺品整理の始め方]の記事で解説)。」
資産の全体像を書き残しておくことは、法的な効力の有無にかかわらず、家族の負担を軽くする実用的な備えと言えるのではないでしょうか。
まとめ
エンディングノートと遺言書の違い、書くべき内容、無料で手に入れる方法、始めるタイミングについて整理してきました。
ポイントは、エンディングノートはあくまで家族への「お願い」であり法的効力を持たない一方、遺産分割など法的な効力を持たせたい希望がある場合は別途、方式を満たした遺言書が必要になるということです。
まずは書きやすい項目から、少しずつ形にしていただければ幸いです。
「終活」の第一歩に。エンディングノートと遺言書、その違いを正しく知る
ご利用にあたっての注意
- 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定のエンディングノート商品・アプリの購入や利用を推奨・勧誘するものではありません。
- 記載の制度は執筆時点(2026年7月時点)の情報に基づく一般的な内容であり、自治体による配布状況等は変更される場合があります。
- 遺言書の作成や相続に関わる法的な判断については、弁護士・行政書士・公証役場・法務局などの専門家・公的窓口にご相談のうえ、最新の公式情報をご確認いただき、ご自身の判断で行っていただきますようお願いいたします。
参考情報
元新聞記者。ガーデニング、インテリア、植物、DIYなどの記事を執筆。華道(池坊 師範科助教・華掌)、フラワーアレンジメントにのべ10年間励み、専門的視点から解説する。一種外務員資格、行政書士試験合格。
「終活」という言葉が広まる一方で、エンディングノートと遺言書の違いが分かりにくいという指摘は、法務の基礎を学んできた立場からもよく分かる悩みだと感じます。エンディングノートはあくまで家族への「お願い」であり、書いてある内容に相続人が従う法的な義務はないという点を、まず正しく理解しておくことが大切です。
一方で、財産の分け方を確定させたいという希望がある場合は、方式を満たした遺言書が必要になります。遺言書の作成や相続に関わる判断は思い込みで進めず、弁護士・行政書士・公証役場・法務局などの専門家・公的窓口に相談しながら、最新の公式情報を確認して進めていただくと安心です。
エンディングノートは年齢や健康状態にかかわらず、思い立ったときに始めてよいという点や、資産情報やパスワードなど重要度の高い情報の保管場所に注意すべきという点も、実務的に参考になる内容だと思います。
筆者も先日、100円ショップ「ダイソー」でエンディングノートが販売されているのを確認しました。ペットに関する情報を記載できる「うちの子ノート」も取り扱いがあるようです。
このほか、自治体の窓口やアプリなど無料で入手できる方法もあるので、ご自身にとってハードルの低い方法で「エンディングノート」を検討してみてはいかがでしょうか。
書いた後も、引っ越しや口座の解約など状況の変化に応じて年に一度は見直す習慣をつけておくと、内容が古いままになるのを防ぎやすくなります。