この記事はここがポイント
- 地震負傷者の3~5割は家具転倒が原因。賃貸でも対策が急務。
- 穴不要の突っ張り棒や粘着マットなど複数器具の活用で転倒防止。
- 寝室、避難経路を優先。家具配置見直しや重心低下も重要な点。
地震のニュースを見るたびに、寝室のタンスや本棚が倒れてこないか不安になる——そんな気持ちを抱えながらも、「賃貸だから壁に穴は開けられないし」と対策を後回しにしていませんか。
実は家具の転倒防止は、賃貸でもできる方法がいくつも用意されています。東京消防庁が公表している調査でも、地震によるケガの多くが家具類の転倒・落下・移動によって起きていることが示されています。
9月1日の『防災の日』は、こうした住まいの備えを見直すきっかけとして活用したいタイミングです。今回は、器具ごとの特徴や賃貸でもできる工夫、対策の優先順位について整理してご紹介します。
住まいにまつわる記事を数多く見てきたなかでも、家具の転倒対策は「気にはなっているけれど、つい後回しにしがち」なテーマのひとつだと感じています。地震のたびに不安になる一方で、賃貸だからと諦めていないでしょうか。今回は、穴を開けない対策から器具ごとの特徴、優先して手を付けたい場所、賃貸契約での注意点まで、実践しやすい形で具体例を交えて整理しました。
家具の転倒は、地震によるケガの大きな原因になっている
東京消防庁が実施した近年の地震被害調査によると、負傷者の3〜5割の方が、屋内における家具類の転倒・落下・移動によってケガをしていました。
地震そのものの揺れだけでなく、部屋の中にある家具が凶器になり得るということです。
さらに、家具が倒れることで出入り口をふさいでしまい、避難が遅れるケースもあります。地震の規模を変えることはできませんが、部屋の中の家具をどう固定し、どう配置するかは、今日から見直せる備えです。
本棚のような背の高い家具を選ぶ際の地震対策の注意点は、「本棚の選び方ガイド」でも詳しく解説しています。
固定器具にはどんな種類がある?
家具の転倒防止に使われる器具は、主に次の4種類に分けられます。それぞれ固定の仕組みが異なるため、家具の種類や設置場所に応じて選びます。
固定器具の種類
独立行政法人国民生活センターが2018年6月に公表した実証試験では、固定していない食器棚は震度6弱相当、冷蔵庫は震度6強相当の揺れで転倒・移動することが確認されました。
同センターの試験では、突っ張り棒やL字金具などの固定器具を使うことで、揺れに対する一定の効果があることも確認されています。
ただし、どの器具も「絶対に倒れない」ことを保証するものではなく、家具の重さや設置状態によって効果は変わります。
器具は1種類だけに頼らず、組み合わせて使うことで転倒のリスクをより減らせるとされています。
「突っ張り棒や粘着マットくらいで、本当に効果があるのか」と感じる方も少なくないでしょう。こうした疑問の背景に「器具さえ付ければ絶対安全」という極端な期待と、「所詮は簡易的なものだから意味がない」という極端な諦めの両方があるということです。
実際には、公的機関の試験結果が示す通り、器具には一定の効果がある一方で万能ではなく、家具の重さや設置状態によって効果が変わるというのが実情に近いといえます。過信も諦めもせず、できる対策から積み重ねていく姿勢が現実的です。
賃貸でもできる「穴を開けない」対策
賃貸住宅では、壁や天井にねじ穴を開けるL字金具の設置が難しい場合が少なくありません。退去時の原状回復の観点からも、まずは次のような「穴を開けない」方法から検討するのが現実的です。
- 突っ張り棒:天井と家具の間に設置。天井の強度や取り付け角度によって効果が変わるため、家具の奥行きに合った長さのものを選ぶ
- 粘着マット・ジェル:家具の底面に貼るだけで設置できる。定期的に粘着力が弱まっていないか確認する
- ストッパー:家具の下に挟み込むだけで設置でき、壁面への加工が不要
これらは単体でも一定の効果が期待できますが、背の高い家具や重量のある家具には、複数の方法を組み合わせておくとより安心です。
例えば、突っ張り棒で天井方向の転倒を防ぎつつ、底面にストッパーを挟んで前方への移動も抑える、といった組み合わせ方が考えられます。設置後は、定期的に緩みや粘着力の低下がないか確認する習慣もあわせて持っておくとよいでしょう。
本棚を自作する場合の転倒防止までの手順は、「本棚DIYの作り方ガイド」で詳しく紹介しています。
優先すべき場所はどこ?
すべての部屋の家具を一度に対策するのは難しいものです。まずは次の場所を優先しましょう。
- 寝室:就寝中は家具の転倒に気づきにくく、逃げ遅れにつながりやすい場所です
- 子ども部屋:タンスや本棚など、子どもがよじ登る可能性のある家具は特に注意が必要です
- 廊下・玄関などの避難経路:家具が倒れることで出入り口がふさがれると、避難そのものが難しくなります
高齢の家族が同居している場合は、就寝スペースに加えて、日中過ごす時間が長い部屋の家具も優先的に見直すとよいでしょう。
とっさに家具から離れる、あるいは倒れてきた家具の下敷きにならないよう動くといった対応が難しい場合もあるため、家具の配置自体を見直し、就寝スペースの周囲に背の高い家具を置かないようにするのも一つの方法です。
器具に頼らず、配置そのものを見直すという選択肢
固定器具を使わなくても、家具の置き方を工夫するだけでリスクを減らせる場合があります。
- 背の高い家具は、倒れたときに出入り口や避難経路をふさがない向きに置く
- 就寝スペースの近くには、できるだけ背の高い家具を置かない、あるいはベッドや布団の位置を家具から離す
- 重いものは家具の下段に、軽いものは上段に収納し、家具自体の重心を低く保つ
インテリアを損ねたくないという声もよく聞きますが、粘着マットやストッパーは家具の陰に隠れる位置に設置できるものが多く、見た目への影響を抑えながら対策できます。
器具の色を家具や壁の色に近いものにする、目立たない家具の背面側に設置するといった工夫も、続けやすさにつながります。
家具の配置そのものを見直す際は、「1LDKレイアウトの基本」も部屋づくりの参考になります。
賃貸契約とのトラブルを避けるために
賃貸住宅で対策を行う際は、設置前に賃貸借契約の内容や管理会社への確認を済ませておくと安心です。
粘着マットの跡が壁紙や床材に残ってしまう、突っ張り棒が天井材を傷つけてしまう、といったケースは退去時のトラブルにつながりかねません。契約内容によって、設置してよい範囲や原状回復の基準は異なります。
なお、今回ご紹介した対策はあくまで市販の器具で自分でできる範囲のものです。建物自体の耐震性や、大型の家具・什器を壁面へ造作として固定するような工事が必要な場合は、市販器具の対策だけでは十分とはいえません。
お住まいの自治体の耐震相談窓口や、建築士・専門業者へ相談することをおすすめします。
まとめ
家具の転倒防止は、器具の種類ごとの特徴を知り、賃貸でもできる方法から取り入れ、優先順位をつけて進めることがポイントです。
寝室や子ども部屋、避難経路にある背の高い家具から、できるところで構いません。一度に完璧を目指す必要はなく、一つ対策するごとにリスクは着実に減っていきます。ご自宅の状況に合わせて、無理のない範囲から始めてみてください。
防災の日に見直したい家具の転倒防止対策
ご利用にあたっての注意
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の商品・サービス・業者の購入や契約を推奨・勧誘するものではありません。記載の対策は市販の器具でできる範囲の一般的な情報であり、効果は家具の重さや設置状況により異なります。建物の耐震性や大型家具の固定工事など、専門的な判断が必要な場合は、お住まいの自治体の耐震相談窓口や建築士・専門業者にご相談のうえ、ご自身の判断で行ってください。
参考情報
元新聞記者。ガーデニング、インテリア、植物、DIYなどの記事を執筆。華道(池坊 師範科助教・華掌)、フラワーアレンジメントにのべ10年間励み、専門的視点から解説する。一種外務員資格、行政書士試験合格。
家具の転倒防止というテーマは、地震のニュースが流れるたびに関心が高まる一方で、日常の中では忘れられがちな備えのひとつだと、これまで多くの住まいの記事を見てきたなかで感じてきました。特に賃貸にお住まいの方から「壁に穴を開けられないから対策を諦めている」という声を耳にすることも少なくありません。
記事でご紹介した通り、突っ張り棒や粘着マット、ストッパーなど、穴を開けずにできる方法はいくつもあります。大切なのは、器具に頼りきるのではなく、家具の配置そのものを見直すことも含めて、できる範囲から少しずつ取り入れていく姿勢だと思います。寝室や子ども部屋、避難経路など、優先すべき場所から手をつけていただければ十分ですし、粘着マットやストッパーは家具の陰に設置できるものも多く、インテリアの見た目を大きく損ねずに対策できる点も心強いところです。設置してからも、緩みや粘着力の低下がないか、たまに確認する習慣を持っておくと安心です。
背の高い家具は倒れたときに出入り口をふさがない向きに置く、重いものは下段に軽いものは上段に収納して家具自体の重心を低く保つといった、器具に頼らない工夫も記事の中でお伝えしました。特別な道具を買わなくても、今日から見直せる部分があるというのは、対策を始めるうえで気負わずに済むポイントだと感じています。数多くの住まいの記事を見てきたなかでも、こうした小さな見直しの積み重ねが、いざというときの差につながると実感しています。
賃貸にお住まいの場合は、設置前に賃貸借契約の内容や管理会社への確認を済ませておくと、退去時のトラブルも避けやすくなります。高齢のご家族と暮らしている場合は、就寝スペースの近くに背の高い家具を置かないようにするなど、配置そのものを見直すことも選択肢のひとつです。建物自体の耐震性や大きな家具の固定工事のように、専門的な判断が必要な部分については、自治体の窓口や専門業者に相談するという選択肢があることも、あわせて知っておいていただけたらと思います。