【宅建士監修】家賃の値上げは拒否できる?通知が届いたときの考え方と対応の流れ
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【宅建士監修】家賃の値上げは拒否できる?通知が届いたときの考え方と対応の流れ

借地借家法32条の要件と、「拒否」と更新・退去の違い|調停までの流れを整理

【宅建士監修】家賃の値上げは拒否できる?通知が届いたときの考え方と対応の流れ
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この記事はここがポイント

  • 家賃値上げ通知受領時は即座に承諾せず借地借家法32条の要件や近隣相場を確認した書面等による冷静な協議。
  • 家賃増減と契約更新・退去は別規定であり貸主の更新拒絶には借地借家法28条に基づく正当事由が必要な点。
  • 不合意時は民事調停法24条の2に基づく調停となり裁判確定時の不足額には年1割の利息が付く借地借家法32条2項の規定。

更新の時期が近づいたころに、管理会社や大家さんから「家賃を改定します」という通知が届く。そんなとき、「この値上げは断れるのだろうか」「断ったら更新できなくなるのでは」と不安になる方は少なくありません。

家賃の値上げは、通知の内容や契約の種類、これまでの経緯によって考え方が変わります。そのため「必ず拒否できる」「必ず従わなければならない」とは言い切れません。

そこで今回は、借地借家法32条にもとづく家賃(借賃)の増額請求の考え方、通知が届いたときの確認手順、合意できない場合の協議・調停・訴訟という流れを、2026年10月時点の法制度にもとづいて整理します。個別の事情の判断は専門家へのご相談が前提となります。

「家賃の値上げは断れる」とSNSで見たことがある方は少なくないでしょう。しかしいざ自分に家賃の値上げ通知が届くと、「断ったら退去させられるのでは」と不安になるケースがほとんどです。

実際、値上げそのものより「どう返事をすればよいか分からない」という相談が目立ちます。もっとも大切なのは、通知が来た時点で慌ててそのまま承諾しないことです。

まずは契約書、通知の理由、値上げ後の金額、適用時期を確認し、納得できない場合は書面やメールで冷静に質問することが大切です。

家賃の値上げに応じるかどうかは借地借家法32条の枠組みで考える

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建物の賃貸借における家賃の増減は、借地借家法32条1項が定めています。e-Gov法令検索で公開されている条文によると、建物の借賃が次のような理由で不相当になったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は将来に向かって借賃の増減を請求できるとされています。

  • 土地・建物にかかる租税その他の負担(固定資産税など)の増減
  • 土地・建物の価格の上昇・低下その他の経済事情の変動
  • 近くにある同じような建物の借賃と比べて不相当になったこと

ただし同項のただし書きにより、「一定の期間は建物の借賃を増額しない」という特約がある場合は、その定めに従うこととされています。

つまり、家賃を上げたい側にとっても「上げたいから上げる」では足りず、上記のような事情に照らして不相当になっているかどうかが問われる仕組みです。値上げが妥当かどうかは、通知に書かれた理由と、近隣の状況などを具体的に確認して見ていくことになります。

通知が届いたときに確認したい4つのステップ

通知を受け取ってもすぐに承諾せず、まずは次の4点を順に確認しておくと、落ち着いて判断しやすくなります。

ステップ①:通知の書面を確認する

値上げ後の金額、値上げの理由、適用開始時期、返答の期限が書かれているかを見ます。口頭だけの連絡であれば、書面やメールで内容を示してもらうよう依頼する方法があります。

ステップ②:契約書の特約を確認する

「一定期間は増額しない」という特約や、家賃の改定に関する条項があるかを確認します。ステップ①の通知内容が、契約書の定めと食い違っていないかも見ておきます。

ステップ③:近隣の同種物件の家賃を調べる

同じ地域で、広さ・築年数・設備が近い物件の募集家賃を複数見比べます。物件ごとに条件が異なるため、あくまで判断材料の一つとして捉えます。

ステップ④:値上げの根拠について説明を求める

通知の理由が分かりにくい場合は、管理会社や大家さんに、値上げの根拠をあらためて説明してもらうよう依頼します。このときも、書面やメールなど日付の残る形が望ましいです。

値上げ通知を受けたとき、どうすれば良いか分からず混乱する方は多いですが、感情的な返答はNGです。「高すぎる」と返すよりも、根拠を一つずつ確認することが重要です。

しかし、多くの通知書には「物価上昇のため」「近隣相場を踏まえて」などとだけ書かれていて、具体的な比較資料が示されていないケースもあります。

その場合、「近隣同種物件との比較資料や、増額が必要な理由を確認したい」と伝えると、話し合いがしやすくなります。

「拒否」と「更新・退去」は別の話:借地借家法26条・28条の考え方

「値上げを断ったら出ていくしかないのか」という不安は、家賃の話と契約更新の話が混ざることで生まれやすいものです。この二つは、条文のうえでは別の規定として整理されています。

  • 家賃の増額:借地借家法32条(借賃増減請求)
  • 契約の更新・更新拒絶:借地借家法26条・28条

e-Gov法令検索の条文によると、期間の定めがある建物賃貸借で、期間満了の1年前から6か月前までの間に更新しない旨などの通知がなかった場合は、従前と同一の条件で契約を更新したものとみなされます。ただし、更新後の契約は期間の定めがないものとされます(26条1項)。

また、賃貸人が更新しない旨の通知や解約の申入れをするには、借地借家法28条により「正当の事由」が必要とされています。正当の事由は、賃貸人と賃借人それぞれの建物使用の必要性、賃貸借の経過、建物の利用状況や現況、立退料などの財産上の給付の申出などを考慮して判断されると、同条は定めています。

ただし、値上げに応じなかったことが正当の事由にあたるかどうかは、個別の事情によって判断が分かれます。この点を一般論だけで断定することはできないため、不安がある場合は弁護士などの専門家にご相談ください。

値上げに合意できないとき:協議から調停、訴訟までの流れ

話し合っても合意に至らない場合の一般的な流れは、次のとおりです。

協議から調停、訴訟までの流れ

協議から調停、訴訟までの流れ
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民事調停法24条の2第1項によると、借地借家法32条の建物の借賃の増減請求に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立てをしなければならないとされています。

同条2項は、調停の申立てをせずに訴えを提起した場合は、原則として受訴裁判所がその事件を調停に付さなければならないと定めています。

裁判所の公式サイトによると、民事調停には医師・建築士・不動産鑑定士などの専門家が調停委員として関与する場合があり、賃料の増減のような専門的な知識が必要な事件の解決にも用いられています。

家賃に関する調停は、原則として建物の所在地を管轄する簡易裁判所に申し立てます(民事調停法24条)。具体的な手続きや費用は、裁判所の窓口や公式サイトでご確認ください。

家賃の値上げで揉めた場合でも、いきなり裁判になるわけではありません。多くは、まず管理会社や貸主との話し合いから始まるので、納得いかないまま値上げを受け入れるのは避けてください。

話し合いでうまく行かない場合は調停もできますが、できる限り協議という形で交渉を進める方が負担が少ないでしょう。

協議中の家賃の支払いについて

借地借家法32条2項によると、増額について当事者間で協議が調わないときは、増額を請求された側(借主)は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、自分が相当と考える額の借賃を支払えば足りるとされています。

一方で、裁判が確定し、支払った額が不足していた場合は、その不足額に、支払期後の年1割の割合による利息を付けて支払う必要があると、同項に定められています。

このため、「相当と考える額」が実際にどの程度かは、近隣の状況や契約の内容によって変わります。

一般的には従前の家賃を支払い続けるケースが多く、それを下回る額にすると家賃の不払いとして扱われるリスクもあります。ご自身で金額を決める前に、専門家へ相談しておくと安心です。

定期借家契約の場合は取り扱いが異なる

賃貸借には、更新のある普通借家のほか、期間満了で終了する定期建物賃貸借(定期借家)があります。

借地借家法38条9項によると、定期借家で借賃の改定に係る特約がある場合には、借地借家法32条の規定は適用されないとされています。たとえば、契約書に「家賃は◯年目から◯円に改定する」といった定めがあるときは、その特約の内容が重要になります。

また、定期借家は契約の更新がないことを前提とした契約です。契約書に家賃の改定に関する定めがあるかどうか、期間満了後にどのような扱いになるかを、あらためて契約書で確認してください。

断る場合の連絡方法と「拒否して不利になる例」の整理

連絡のときに押さえたい4つのポイント

  • 書面かメールで伝え、日付が残るようにする
  • 返答期限がある場合は、期限内に何らかの返答をする
  • 「増額に応じられない」のか「減額・据え置きを希望する」のか、希望の内容を明確にする
  • 感情的な表現を避け、通知の理由に対する疑問点や、確認した近隣の家賃などの事実を簡潔に添える

返答の内容は、据え置きの希望、増額幅の縮小、更新料や設備面などを含めた条件の調整など、さまざまな形が考えられます。ただし、希望どおりになるとは限りません。

値上げを断る場合、伝え方には特に注意が必要です。「払えません」「納得できません」だけでは、相手に意図が伝わりにくく、感情的な対立になりがちです。

管理会社や大家としては、通知を出した時点で少しでも家賃を上げたいという気持ちが根底にあります。感情的に拒否すると、お互いの妥協点が見出せず話し合いが長引いてしまいます。

拒否する場合、「現時点では提示された増額には同意できません。近隣相場や増額理由を確認したうえで、改めて協議させてください」といった表現がおすすめです。

合意に至らなかった場合に起こりうること

事実の範囲で整理すると、次のような展開があり得ます。

  • 協議がまとまらず、調停や訴訟の手続きに進む
  • 裁判の結果、増額が正当とされた場合は、不足額と年1割の利息を支払う必要が生じる
  • 賃貸人が更新しない旨の通知をした場合は、その正当の事由の有無が争点になる
  • 定期借家では、契約で定めた期間の満了により契約が終了する(期間が1年以上の場合は、原則として期間満了の1年前から6か月前までに貸主から終了の通知が必要/38条6項)

これらは一般的な可能性を示したもので、実際の結果は個別の事情ごとに異なります。

迷ったときの相談先

値上げの妥当性や、拒否した場合の見通しは、契約書や通知の内容を見てもらわないと判断できません。次のような窓口の利用を検討してください。

  • 法テラス(日本司法支援センター):法テラス・サポートダイヤル(0570-078374、平日9時〜21時、土曜9時〜17時、祝日・年末年始を除く。2026年10月時点で公式サイトに掲載の受付時間。IP電話などからは03-6745-5600)は、相談内容に応じて法制度や相談機関を案内する窓口です。オペレーターが個別の法律相談や法的判断を行うものではないと公式サイトに記載されています。
  • 弁護士・司法書士:個別の事案の見通しや、書面の作成、手続きの代理が必要な場合に相談します。司法書士は代理できる範囲に制限があるため、依頼前に確認してください。
  • お住まいの自治体の相談窓口:法律相談や住まいの相談を設けている自治体があります。実施の有無や内容は、自治体の公式サイトでご確認ください。

まとめ

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家賃の値上げ通知が届いたときの考え方を整理しました。

  • 家賃の増減は借地借家法32条1項が定め、不増額の特約があればその定めに従う
  • 値上げに応じるかどうかと、更新・退去の話は別の規定(26条・28条)で整理される
  • 合意できないときは、協議から調停(民事調停法24条の2)、訴訟という流れが基本
  • 協議中は相当と考える額を支払えば足りるが、裁判確定後に不足があれば年1割の利息が付く(借地借家法32条2項)
  • 定期借家で借賃改定の特約があるときは、32条が適用されない(38条9項)

まずは契約書と通知の内容を落ち着いて確認し、ご自身の状況に合わせて、無理のない範囲から対応を進めてみてください。

川崎 瑞季
監修者川崎 瑞季宅地建物取引士/不動産・金融ライター

家賃の値上げ通知が届いたときに一番避けたいのは、何も確認しないまま承諾してしまうこと、そして感情的になって家賃の支払いを止めてしまうことです。

納得できない場合は値上げを拒否できますが、拒否の理由を論理的に示すことが大切です。

まずは値上げの理由と今後の対応について、管理会社や大家さんに確認してみてください。

協議の際は書面で記録を残すことを心がけ、電話で話した場合でも、後で内容をメールで送りましょう。困ったときは、専門家に遠慮なくご相談ください。

ご利用にあたっての注意

  • 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の商品・サービス・業者の購入や契約を推奨・勧誘するものではありません。
  • 記載の制度は2026年10月時点の内容であり、法改正や裁判所の運用により変わる場合があります。家賃の値上げへの対応や、更新・退去の見通しといった個別のご事情については、e-Gov法令検索などの公式情報の確認に加え、弁護士・司法書士・法テラス・各自治体の窓口などの専門家へご相談のうえ、ご自身の判断で行ってください。
  • 本記事の内容は、特定の結果(値上げの拒否が認められること等)を保証するものではありません。

参考情報

LIMO&ホーム編集部
くらしとお金の経済メディア「LIMO」住まい・暮らし領域『LIMO&ホーム』編集部
川崎 瑞季
宅地建物取引士/不動産・金融ライター

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