相続や終活の話、切り出すきっかけは「防災の日」でいい。実家の"知らない"に気づく自然な会話術
metamorworks/shutterstock.com
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相続や終活の話、切り出すきっかけは「防災の日」でいい。実家の"知らない"に気づく自然な会話術

家庭の防災、7割が「できていない」。非常食の心配から、実家の資産や書類の話まで自然につなげる方法

執筆者熊谷 良子LIMO&ホーム編集部記者/ 相続診断士 / ガーデンコーディネーター/証券外務員二種資格
09:06
相続や終活の話、切り出すきっかけは「防災の日」でいい。実家の"知らない"に気づく自然な会話術
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この記事はここがポイント

  • 親の相続経験者の約6割が「生前に十分話し合えなかった」と回答。52.1%は「親が生前に行った準備は特にない」(JCOM調査)
  • 実家を相続する可能性がある人の74.58%が、資産価値や権利関係を「まったく把握していない」(株式会社中央プロパティー調査)
  • 防災グッズを見直すタイミングは、実は相続・終活の話を切り出す、ちょうどいいきっかけになる

「もっと早く、話しておけばよかった」。親の相続を経験した人に、こんな後悔を口にする方は少なくありません。実は筆者自身も、その一人です。

相続というと、不動産や預貯金といった大きな資産を思い浮かべる方が多いと思います。

でも筆者は、たとえば「物置の鍵がどこにあるか」「あの書類はどこにしまってあるか」といった、一見ささいなことも、広い意味では"相続"に含まれるのではないかと感じています。

もちろん法律上の定義ではありませんが、そうした「受け渡す・引き継ぐ」という意識を家族の間で少し持てているだけで、残す側にとっても、残される側にとっても、意味のある、困らない備えになるはずです。

最新の調査を見ても、多くの家族が「話し合えないまま」その時を迎えているのが実情です。

今回は、9月1日の「防災の日」をきっかけに、相続・終活の話をどう始めるか、についてお伝えします。

親の相続、生前に「話し合えなかった」人が6割

調査概要

JCOM株式会社が2026年8月に発表した調査(直近5年以内に親の相続を経験した30〜60代の男女330名対象)によるものです。

生前の話し合い、約6割が「できなかった」

生前に「相続や財産について十分に話し合う機会がなかった」と回答した人は約6割。「あまり話し合わなかった」(29.7%)、「全く話し合わなかった」(29.4%)を合わせるとこの数字になります。さらに、半数以上(52.1%)が「親が生前に行った準備は特にない」と回答しました。

また、親の相続を振り返り「生前に行っておく必要があったと思うこと」として下記のような項目が挙がりました。

生前に行っておく必要があったと思うこと

  • 実家の片付け・不用品の処分:40.3%
  • 相続について家族で話し合う機会を設けること:30.9%
  • 財産目録の作成・資産の可視化:26.4%

いずれも、本人が元気なうちにしかできないことばかりです。「まだ大丈夫」「そのうち話そう」と思っているうちに、機会を逃してしまうご家庭は、決して少なくないのだと感じます。

《実家や資産の「知らない」を放置していませんか》

実家の資産、74.58%が「まったく把握していない」

株式会社中央プロパティーが2026年8月に発表した調査(40歳代〜60歳代以上の男女240名対象)では、将来相続する可能性がある不動産について「正確な資産価値」や「境界線・権利関係」を「まったく把握していない」と答えた人が74.58%。

過去に調査した経験がある人を含めても、85%が現状を正しく認識できていないという結果でした。半数近い48.75%は、実家がその相続対象になる可能性があると答えています。

長年住み続けている実家ほど、「お隣とはなんとなくこの辺りで」といった調子で、境界線があいまいなまま代々続いてきた、というケースも少なくないのではないでしょうか。

話し合いが進まない理由

  • 親が元気なうちは「相続」の話を切り出しにくい:26.23%
  • なんとなく話したことはあるが、具体的な結論は出ていない:31.71%
  • 親が元気なため、まだ全く話し合っていない:33.33%

後者2つを合わせると、約65%が具体的な方向性を共有できていません。誰かが悪いわけではなく、「切り出しにくさ」こそが、多くの家庭に共通する一番の壁なのだと思います。

「知らない」まま残されがちなのは、不動産だけではありません。

「入っていたはずの生命保険」「昔つくって、そのままになっている預金口座」も、生前に話を聞けていないと、相続の場面で家族を悩ませる典型例です。

理想はもちろん、元気なうちに本人から聞いておくこと。ただ、それがどうしても叶わなかったとしても、諦める必要はありません。

ここ数年で、亡くなった後に、相続人などが"本人しか知らない資産"を一括で照会できる公的な仕組みが整ってきているからです。

生命保険は「生命保険契約照会制度」

生命保険契約照会制度のしくみ

生命保険契約照会制度のしくみ

一般社団法人生命保険協会が運営する制度で、2021年に始まりました。

  • 利用できる場面:本人の死亡、または判断能力の低下後に、家族などが利用
  • 分かること:加盟する保険会社の中で、契約の有無と契約先の会社名
  • 分からないこと:保障内容や保険金額
  • 料金:Web申請6000円・書面申請7000円(2026年4月時点の料金)

預貯金は「相続時預貯金口座照会」

預金保険機構が運営する制度で、2025年4月に始まりました。

  • 利用できる場面:本人の死亡後、相続人などが利用
  • 対象となる口座:本人が生前にマイナンバーを付番(登録)していた口座に限る
  • 分かること:金融機関名・支店名・口座番号
  • 分からないこと:残高
  • 料金:5060円

※単に親がマイナンバーカードを持っていた、というだけでは対象になりません。生前に口座とマイナンバーの紐づけ(付番)が済んでいる口座だけが照会対象になる点に注意が必要です。

どちらも保障内容や残高までは分からず、「どこにあるか」を調べるための制度ですが、"聞きそびれてしまった後"の安心材料として、覚えておいて損はありません。

問題は、「相続」や「終活」という言葉そのものが重すぎることかもしれません。だとすれば、いきなりその言葉を使う必要はありません。

「家族の引き継ぎメモ」「もしもの情報シェア」くらいの軽さから、別の入口で話を始めてみるのも一つの手です。

きっかけは「防災の日」でいい

9月に入ると、テレビやニュースで台風や地震への備えが話題になる機会が増えます。

「実家の防災グッズ、ちゃんとしてる?」という一言は、相続や終活の話とは違い、親を心配する気持ちから自然に出てくる会話です。ちょうど9月1日は「防災の日」。この時期の空気に乗せてしまえば、身構えずに実家の話を切り出すことができます。

家庭の防災、実は7割が「できていない」

株式会社クロス・マーケティングの調査(2026年8月、全国20〜79歳の男女3000名対象)によると、家庭内の防災の備えが「できていない」人は74%。モバイルバッテリーも、所持率は65.8%あるものの、実際に「よく使っている」人は26.0%にとどまり(株式会社メディアシーク調査、2026年8月)、持っているだけで満充電か確認していない、というケースが少なくないようです。

まずはこうした非常食や充電の話から入り、「避難するとき、通帳やお薬手帳などはすぐ持ち出せる?」「大事な書類はどこにまとめてある?」というふうに、持ち出す物の置き場所を確認し合う。

これなら、身構えさせずに実家の中身を一緒に見て回るきっかけになります。

見直しておきたい「医療・介護の資格確認書類」

紙の健康保険証はもう使えません

紙の健康保険証はもう使えません

2026年8月からは従来の紙の健康保険証が使えなくなり、「マイナ保険証」か、それに代わる「資格確認書」で医療機関にかかる仕組みに変わりました。

とくに後期高齢の親世代では、資格確認書が交付されているケースも多くあります。介護保険被保険者証(介護保険証)も合わせて、「医療・介護の資格が分かる書類はどこにまとめてあるか」を、家族で確認しておくと安心です(保険証の取り扱いは加入する医療保険者や年齢・状況によって異なるため、詳細はお住まいの自治体や加入先の保険者にご確認ください)。

書類の置き場所を確認し終えたら、もう一歩だけ話を広げてみましょう。

「避難経路は把握してる?」「家の中で危ないところはない?」――そうやって家の中を一緒に歩いてみると、「そういえば、あの部屋の鍵はどこ?」「この書類、実は場所を知らないかも」という具合に、家族の誰も把握していなかった"わが家の属人化"に気づくことがあります。

防災グッズの中身を見直すのと同じように、「知っているつもり」だった家の情報を、一つひとつ確かめてみる。それが、終活や相続の話に、身構えずにたどり着くための助走になります。

まとめ:終活は「重い話」じゃなくていい。防災の日から始める小さな一歩

相続や終活の話は、どうしても「重い話」になりがちです。

でも、9月1日の防災の日を機に「実家の備え、大丈夫?」から会話を始めれば、自然な流れで一歩を踏み出せるかもしれません。

まずは、実家の防災グッズや避難経路を一緒に確認すること。家の中を歩きながら「この鍵はどこ?」「この書類は?」と聞いてみれば、家族の誰も把握していなかった"わが家の属人化"に、案外あっさり気づけるものです。

そこから、資産のこと、希望のこと、家族に伝えておきたいことへと、少しずつ話を広げていく。

それが、後悔を減らすための、いちばん現実的な始め方なのかもしれない…と、経験者として感じています。

筆者からのコメント

実は筆者自身も、父を急に亡くした際、「物置の鍵がどこにあるのか」「家の図面がどこに保管されているのか」といった、ごく細かなことが分からず苦労した経験があります。当たり前のように父一人に任せていたことが、思っていたよりずっと多かったのだと、後になって気づかされました。

資産や制度の話だけでなく、こうした「属人化していた、地味だけれど大事な情報」を家族で共有しておくことこそが、いざという時の負担を大きく減らしてくれるということです。

実家の避難経路や家の中の安全確認をしてみることは、そんな"うちの属人化"に気づく、身構えずに始められるきっかけになるはずです。

参考資料

熊谷 良子LIMO&ホーム編集部記者/ 相続診断士 / ガーデンコーディネーター/証券外務員二種資格

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