【墓じまい】改葬件数は10年で倍増。お盆に考える「先祖代々のお墓問題」後悔しないための3つの鉄則
Wako Megumi/shutterstock.com
住まい

【墓じまい】改葬件数は10年で倍増。お盆に考える「先祖代々のお墓問題」後悔しないための3つの鉄則

「お墓はもう要らない?」後継ぎ不在と費用負担がネックに。今こそ知っておきたい費用のリアルと、親族・お寺とのトラブル回避術

執筆者熊谷 良子LIMO&ホーム編集部記者/ 相続診断士 / ガーデンコーディネーター/証券外務員二種資格
21:06
【墓じまい】改葬件数は10年で倍増。お盆に考える「先祖代々のお墓問題」後悔しないための3つの鉄則
Wako Megumi/shutterstock.com

この記事はここがポイント

  • 10年で倍増する改葬件数:少子化で「継承者がいない」悩みが40歳代から顕在化しています。
  • 約6割が「お墓は自分の代まで」と共感し、新しい供養先が選ばれています。
  • トラブルを防ぐ3ステップ:親族・お寺への早めの相談と正確な費用の把握が重要です。

もうすぐお盆休み。

故郷へ帰省して家族や親族と顔を合わせ、ご先祖様に思いを馳せるとともに、お墓参りに出かける方も多いのではないでしょうか。

しかし近年、そうしたお盆の恒例行事の裏側で、将来のお墓のあり方について重い悩みを抱え始める方が多くなっています。

少子高齢化やライフスタイルの変化、さらには核家族化や地方から都市部への人口流出の進行により、先祖代々のお墓をこれまでの形で維持し続けることが物理的にも経済的にも難しくなっています。

お墓参りのために遠方まで足を運ぶ体力的な負担に加え、年間を通じて発生する管理費やお布施などの経済的負担が、年金生活を控えた世代に重くのしかかっているのです。

その結果、お墓を更地にして管理者に返し、別の形で供養する「墓じまい(改葬)」を選択する人が大幅に増加しています。

とはいえ、「何から始めればいいのか全く見当がつかない」「最終的な費用はどれくらいかかるのか」「親族やお世話になったお寺とトラブルにならないためにはどう立ち回ればいいのか」と、見えない壁に対して不安を持つ方も多いでしょう。

本記事では、自身も実家の「墓守娘」であり、相続診断士の資格を持つ編集記者としての視点から、国が発表している最新のデータや各種アンケート調査をもとに、墓じまいの実態と、トラブルを防いで後悔しないためのポイントを詳しく解説します。

終活の一環として自分自身が入るお墓の準備を始める方がいる一方で、すでにある「先祖代々のお墓」をどうするかが重い課題になっているご家庭も決して少なくありません。

暮らしとお金に関する各種の一次データを日々読み解いていると、親世代の介護や相続といった現実に直面する50歳代前後から、このお墓の問題が急浮上してくるのがわかります。

実はお墓というものは、「購入」したといっても土地のように不動産登記の対象になるわけではありません。

「使用権」を得て、その権利を維持するために管理費を支払い続ける仕組みなのです。

だからこそ、不要になったからといって簡単に「断捨離」できるものではありません。しかるべき手順や注意点を知って、未来の家族への負担を減らす方法を一緒に考えていきましょう。

データが語る「墓じまい」の倍増と維持費の重圧

「墓じまい」はもはやごく一部の限られた人たちだけの特別なことではありません。

グラフで見る「改葬件数」の推移(1997年度~2024年度)

グラフで見る「改葬件数」の推移(1997年度~2024年度)
出所:厚生労働省「衛生行政報告例」をもとにLIMO&ホーム編集部作成

厚生労働省の調査によると、墓じまい(改葬)の件数は、2014(平成26年)度には約8万4000件でしたが、2024(令和6)年度には約17万6000件へと、10年の間で倍増しています。

少子化や核家族化が進み、「お墓を継承してくれる人がいない」「子どもや家族に経済的・心理的な負担をかけたくない」といった理由から、具体的な行動を起こす人が増えている様子がうかがえます。

お墓の引っ越しである「改葬」の手続きは、新しい供養先、現在の墓地管理者、行政機関の順に進めます。

近年では、改葬の最終地点として、従来の一般墓ではなく、納骨堂への「収蔵」や、樹木葬など自然に還る「埋蔵法」を選ぶケースも主流になりつつあります。

受入証明書の入手:まず新しい供養先を決め、管理者から「受入証明書(墓地使用許可証など)」を発行してもらいます。

改葬許可申請書の準備:現在のお墓がある市区町村で「改葬許可申請書」を入手し、現在の墓地管理者に署名・捺印(埋蔵証明)をもらいます。

改葬許可証の発行:揃った書類を市区町村の役場へ提出し、正式な「改葬許可証」を発行してもらいます。

遺骨の取り出しと墓所の返還:現在の墓地管理者に「改葬許可証」を提示し、遺骨を取り出します。

このとき仏教の場合は、お墓に宿った魂を抜く「抜魂式(お霊抜き、閉眼供養など)」などの宗教的な儀式を行うのが一般的です。

その後、墓石を解体・撤去して敷地を更地に原状回復し、管理者に返還します。

新しい供養先への納骨:新しい供養先の管理者に「改葬許可証」などを提出し、遺骨を納めると手続きは完了です。

なお、必要書類の名称や詳細な手続きの流れは自治体ごとに異なる場合があるほか、宗教や宗派によって必要な儀式も変わります。

トラブルなくスムーズに進めるためには、自己判断せず、事前に市区町村の窓口や現在のお墓の管理者へ確認しながら進めることが大切です。

維持費への負担感と将来への不安

お墓の維持を難しくさせている要因の一つは、やはり「費用」の問題です。

お墓の管理費として「年間」いくら支払っていますか?

お墓の管理費として「年間」いくら支払っていますか?

株式会社huhuの調査によると、お墓の維持にかかる年間の管理費は「5000円〜1万円未満」が最多となっていました。

金額だけを見ると、そこまで家計を圧迫するような高額ではないように思えるかもしれません。

しかし、同調査では実に78.0%の人がこの管理費の支払いを「負担に感じている」と回答。

さらに、今後の不安要素として最も多かった回答が「管理費の値上げ」(61.0%)でした。

決して余裕があるわけではない年金生活、日々の物価高が家計にのしかかる中、一度契約したら将来にわたって半永久的に支払い続けなければならない固定費の存在は、数字以上の心理的重圧となっていることが読み取れます。

さらに、遠方のお墓であれば交通費もかさむため、実質的な負担額はさらに大きくなるでしょう。

6割が共感「お墓は自分の代で終わらせてよい」

管理費の負担や承継者不在といった現実的な問題に直面し、お墓に対する伝統的な価値観も大きく変化しています。

「自分の代でお墓を終わらせてもよい」という考えに、どの程度共感しますか?

「自分の代でお墓を終わらせてもよい」という考えに、どの程度共感しますか?

一般社団法人 終活協議会/想いコーポレーショングループの実態調査では、「自分の代でお墓を終わらせてもよい」という考えに対し、過半数を超える61.1%の人が共感を示しました。

「家」として代々継承することを前提とした従来型のお墓から、個人の代で完結させる考え方がいまや多数派になりつつあることがうかがえます。

多様化する新しい「供養先」の選択肢

お墓に対する価値観の変化に伴い、墓じまいをした後の新しい「供養先」の選択肢も多様化しています。

同調査で「もしご自身が供養先を選ぶとしたら」という問いに対し、従来の「一般墓」を選んだ人は23.3%にとどまりました。

その一方で、永代供養(19.5%)、散骨(15.7%)、樹木葬(15.0%)、手元供養(3.3%)といった新しい供養先の合計は53.5%にのぼり、全体の半数を超えています。

さらに、国民生活センターの広報誌でも、インターネットを使ったお墓を利用するなど、これまでの枠にとらわれない弔いの形が広がっていることが指摘されています。

次世代に負担を残さず、自分たちらしい供養の方法を選ぶ人が増えているのです。

少子化が進む現在、一人っ子同士が結婚するケースも珍しくありません。もし夫婦がそれぞれの実家の「墓守」を任された場合、将来我が子には二つのお墓の管理と費用を背負わせることになってしまいます。

「お墓は自分の代で終わらせる」という価値観が6割以上の共感を集めるのも納得のいく話です。

永代供養や樹木葬など多様な選択肢がある今こそ、これまでの慣習やしきたりに過度に縛られず、自分たちの家族に合った無理のない形を探すチャンスかもしれません。

立ちはだかる「費用」「トラブル」の壁

さて、いざ墓じまいを進めようと決意しても、実行に移すまでにはいくつかの大きな壁が立ちはだかります。

費用の不透明さと予想外の出費

最も大きな壁が「見えないお金」の問題です。墓じまいには、現在ある墓石の撤去工事費(解体・処分費用)、お寺へのお布施(離檀料)、そして新しい供養先の費用など、複数の段階で支払いが発生します。また、閉眼供養(魂抜き)のためのお布施や、行政手続きに関する諸費用も必要です。

お墓の維持や墓じまいにかかる費用、具体的な金額を知っている?

お墓の維持や墓じまいにかかる費用、具体的な金額を知っている?

しかし、前述の調査によると、約9割(88.6%)の人が墓じまいにかかる具体的な費用を「知らない」と回答。

費用の見えにくさが二の足を踏ませる要因となっていることがうかがえます。

また、国民生活センター『「国民生活」2025年12月号』によれば、新しい供養先として人気の「合祀・永代供養」でも、遺骨1体につき数十万円かかる施設があり、新たにお墓を建てるより費用がかさんだり、先祖代々のお墓から複数の遺骨を移すことで想定外の高額な費用がかかったりするケースもあると指摘されています。

お寺や親族との「離檀」トラブル

費用の問題に加えて深刻なのが、周囲とのトラブルです。

国民生活センターには、墓や葬儀サービスに関して「価格やサービス内容について十分な説明がない」といった相談が寄せられています。

中でも「墓じまいのために高額な離檀料を請求された」といったトラブルは頻繁に報告されており、地方自治体の消費生活センターにも「離檀料として200万円かかると告げられた」といった相談が寄せられています。

離檀料には明確な法的な基準金額がないため、当事者間の話し合いで解決する必要があります。

しかし、こうしたトラブルの背景には、単なる金銭への執着だけでなく、長年にわたりお墓を放置したまま、事前の相談もせずに突然墓じまいを申し出たことによる「寺院側との感情的な軋轢」が原因となっていることも少なくないとも言われます。

お寺側としても、管理費やお布施によって墓地全体の維持運営を行っている側面があるため、一方的な通告は反発を招きやすいのです。

お墓に関するトラブルは多岐にわたり、その内容も複雑化しています。お寺からの高額な離檀料請求が話題に上がることが多いですが、最近では「永代供養」を掲げる新しい納骨施設でのトラブルも報告されています。

国民生活センターの広報誌でも指摘されている通り、「永代供養」という言葉は安心感というイメージが先行しがちです。しかし実際には、遺骨の管理場所や個別の供養方法、管理期間が契約書で明確に規定されていないケースが存在し、場合によっては景品表示法における不当表示にあたる可能性も指摘されています。

新しい供養先を選ぶ際は、パンフレットの記載だけで判断せず、契約内容や管理規則の細部まで事前に確認することがトラブル回避につながります。

墓じまいで「後悔しない」ための3つのステップ

では、周囲と揉めることなくスムーズに墓じまいを進めるためにはどうすればよいのでしょうか。ここまでのデータや事例を踏まえた3つのステップをご紹介します。

ステップ1. 家族や親族への「早めの相談」

墓じまいで最も大切なのは、関係者全員との合意形成です。前述の調査では、4人に1人がお墓の今後について「家族に話を切り出したいのに切り出せない」と悩んでいます。

自分一人で決めてしまい、事後報告になってしまうと、親族間で「なぜ勝手に片付けたのか」と大きなしこりを残すことになりかねません。もうすぐやってくるお盆やお彼岸など、家族が集まるタイミングをきっかけに、早めに話し合いの場を持つことがトラブル回避の第一歩です。

ステップ2. 正しい費用の把握と専門家への相談

まずは現在の墓地の管理者(お寺や霊園)と新しい供養先の両方に相談し、費用の全体像を見積もりましょう。

特にお寺に対する「離檀料」は、長年ご先祖様のお骨をお世話していただいたことへのお礼という側面もあります。

トラブルを避けるためにも真摯に話し合い、お互いが納得できる適正な金額を擦り合わせることが重要です。

また、墓石を撤去する前には、お墓に宿った魂を抜く宗教的儀式である「抜魂式(ばっこんしき/お霊抜き)」を行うのが一般的です。

こうした一連の手続きに不安がある場合は、専門家に相談するのも有効です。

ステップ3. 新しい供養先を「期限を決めて」選び、手続きに備える

検討中のお墓の種類は、「樹木葬」が約6割で最多

検討中のお墓の種類は、「樹木葬」が約6割で最多

現代の墓じまい(改葬)は、単に別の一般墓へ遺骨を引っ越しさせるだけではありません。

株式会社鎌倉新書の調査によると、検討されているお墓の種類(複数回答)は「樹木葬」が56.4%と最も多く、次いで「永代供養墓・合祀墓」(47.4%)、「納骨堂」(32.1%)が続きました。

一方で、従来の「一般墓(墓石あり)」は16.7%にとどまっています。ほかにも、海などに還す「散骨」(3.8%)や、遺骨の一部を自宅に置く「手元供養」(2.6%)など、ライフスタイルに合わせたさまざまな改葬方法が存在することがわかります。

しかし、このように選択肢が多様化している分、「どれを選べばいいのか」と迷い、お墓選びの検討が長期化してしまう方も少なくありません。

費用、アクセスの良さ、今後の管理負担などを踏まえ、「いつまでに決めるか」という明確な期限を設けて、家族にとって一番重視する条件を整理することが大切です。

まとめにかえて

厚生労働省のデータが示す通り、改葬件数が倍増している今は、まさに日本の「供養のあり方の転換期」にあると言えるでしょう。

墓じまいは決して「お墓をなくすこと」や「ご先祖様をないがしろにすること」ではないと筆者は考えます。

「未来の家族の負担を減らし、現代のライフスタイルに合った新しい供養のカタチを選ぶこと」だと言えます。

もうすぐお盆を迎えますが、家族や親族が集まるこの機会に、まずは現状の維持費の負担や新しい供養の選択肢を知り、お墓の今後について話し合うことから始めてみてはいかがでしょうか。

若いうちは友人や知人との関わりを優先しがちですが、年齢を重ねて自身のルーツに向き合うようになると、世代を超えた家族の縁の深さに改めて気づかされるものです。

実家のお墓を管理する「墓守娘」として親を見送り、自身の終活も見据える筆者自身、どれほどデータや知識を集めても、それだけでは割り切れない「祭祀」のデリケートさを痛感しています。

だからこそ、問題解決の鍵となるのは、最終的に「家族や親族との丁寧な話し合い」「早めの情報共有」に尽きると実感しています。

禍根を残さず、心を込めて墓じまいを進めること。

それは単なるお墓の整理ではなく、老後の不安を手放し、これからの自分らしい人生を歩み出すための大切なステップになるはずです。

参考資料

熊谷 良子LIMO&ホーム編集部記者/ 相続診断士 / ガーデンコーディネーター/証券外務員二種資格

関連タグ