この記事はここがポイント
- 毛玉取りは生地を削るため平らな場所に置いて軽く当て、手でむしり取らずに取りすぎない丁寧な作業。
- 電動機器は取扱説明書の使えないものを確認し、カシミア等の高価な衣類は無理をせず専門店への相談。
- 2024年8月20日改正のJIS L 0001洗濯表示の確認や、ネット使用と着用後のブラッシングによる予防。
冬になると、お気に入りのニットの脇や袖に、いつの間にか毛玉がびっしり。「毛玉取り器で穴があかないか心配」「どの道具が合うのか分からない」と迷うこともありますよね。
毛玉取りの道具はさまざまですが、コツは「衣類の素材と状態に合わせて、取りすぎない」ことです。衣類も道具も、手を入れすぎないことが長持ちの近道だと感じています。
そこで今回は、毛玉ができる仕組み、道具の種類ごとの特徴と注意点、毛玉を増やさない予防法、洗濯表示の読み方、クリーニング店に相談したほうがよいケースまでを、行政機関・業界団体・試験機関・メーカー公式の情報をもとに整理します。
ファッションを追いかけるのが趣味なので、お気に入りのニットに毛玉ができると少し切なくなります。今回は、毛玉ができる原因と、傷めにくい取り方、洗濯表示の読み方、取りきれないときの考え方を、公的機関や業界団体、メーカーの説明書をもとに整理しました。
毛玉ができる原因は「摩擦」と素材の違い
東京都クリーニング生活衛生同業組合によると、生地の表面が着用や洗濯で摩擦を受けると、繊維の先端が毛羽として引き出され、その毛羽が束になって絡み合い、毛玉になるとされています。
- できやすい場所:脇、袖の内側、肘など繰り返し擦れる部分。リュックやショルダーバッグが当たる部分も
- できやすいもの:起毛品、編物(ニット)、ひねりの甘いふわふわした糸を使ったもの。繊維の種類や、撚りの少ないやわらかな糸かどうかが関係するとされる
- 素材による違い:アクリルやポリエステルなどの合成繊維は強度があり、毛玉が脱落しにくく表面に残りやすい。ウールなどの動物繊維は、毛玉が自然に脱落しやすい(ただし、ウールでも撚りの少ないやわらかな糸を使ったものは毛玉ができやすいとされる)
毛玉のできやすさは試験規格でも評価されています。カケンテストセンターによると、『JIS L 1076』のピリング試験は、擦れ作用による毛玉のできる度合いを調べるものです。また、長繊維のフィラメント糸を使った生地は、短繊維の紡績糸を使った生地に比べて表面に毛羽が出にくい構造とされていますが、スポーツウェアのジャージ生地などでは毛玉ができることもあると説明されています。
毛玉取りの基本は「平らに置いて、軽く当てて、取りすぎない」
毛玉取りで気をつけたいのは、毛玉と一緒に生地そのものを削ってしまうことです。東京都クリーニング生活衛生同業組合は、毛玉を取るたびに生地が徐々に薄くなると説明しています。
また、指でつまんで引っ張ると繊維がさらに引き出されるため、手でむしり取るのは避けるよう案内しています。
- ステップ①:衣類を平らな場所に置き、シワを伸ばす。テスコムの電動毛玉クリーナーの説明書では、身に着けたままや、手やひざの上にのせての使用は、けがのおそれがあるとして禁止されています(製品により異なるため、お手持ちの機器の説明書をご確認ください)
- ステップ②:目立たない場所(裏側など)で試す。風合いが変わらないかを先に確かめます
- ステップ③:少しずつ、軽く動かす。気になる毛玉だけを取ります
- ステップ④:取りきれない分は無理をしない。生地を守ることを優先します
道具の種類ごとの特徴と注意点
道具の種類ごとの優劣を公的機関が比較した資料は、今回確認できた範囲では見当たりませんでした。ここでは、確認できた公式情報の範囲で整理します。特定の商品や店舗の紹介はしていません。
電動タイプ:説明書の「使えないもの」を必ず確認する
メーカー(テスコム)の電動毛玉クリーナーの取扱説明書(2026年10月時点で公式サイトに掲載されているもの)では、次の注意が示されています。
- 平らな場所でシワを伸ばしてから使う
- 外刃を布地に強く押し当てない(穴があくおそれ)
- 本体はゆっくり動かす(早く動かすと毛玉が切れずに残る)
- 内刃は刃先が鋭く、けがのおそれがある ・身に着けたままの衣類や、手やひざの上にのせた衣類に使わない
- ファスナーや金具の周りでは刃が引っかからないよう注意する
同じ説明書では、使えないものとして、モヘア・アンゴラ・カシミアなど毛足が長いもの、シワが伸ばしにくいもの、薄い生地やレース・ストッキング、縫い目や刺繍の部分、アップリケや布が重なる部分、凹凸のある部分、ほつれたり布が薄く弱くなったりしている部分が挙げられています。
なお、同じ説明書の「5段階風合いガード」の高さ目安には「モヘアなどの毛足が長いセーター」の記載もあります。
迷う場合は使用を控えるか、メーカーに確認すると安心です。使える衣類の範囲や注意事項は製品ごとに異なりますので、お手持ちの機器は必ず説明書でご確認ください。
はさみ・ブラシ:ていねいに切る、毛羽を整える
東京都クリーニング生活衛生同業組合は、毛玉を取る方法として、毛玉取り器を慎重に使うか、はさみで丁寧に切り取ることを挙げています。
また、発生した毛玉は引っ張らずにていねいに切り取るよう案内しています。はさみを使う際は、刃先で生地まで切ってしまわないよう、少しずつ切り進めるとよいでしょう。
洋服ブラシについて、東京都クリーニング生活衛生同業組合は、毛玉を取る道具というより、普段から毛羽の絡みを整えて毛玉を増やさないためのお手入れとして紹介しています。
全国クリーニング生活衛生同業組合連合会も、カシミアなど獣毛製品は、着用後に毛ブラシで毛並みを整えるよう案内しており、その際は柔らかいブラシを寝かせて使うなど、ソフトに扱うよう勧めています。
カミソリなどの刃物、くし型・軽石タイプ、身近なものでの代用
これらについては、今回確認した公的機関・業界団体・メーカー公式の資料に、使い方や適否の記載を確認できませんでしたので、効果や安全性は断定しません。
一般に、刃を生地に直接当てる道具は、手や指を切る、生地を切る、穴をあけるといった怪我・衣類破損のリスクがあると考えられます。
使う場合は製品の使用上の注意を読み、目立たない場所で試してください。不安なときは、はさみで少しずつ切る方法も一案です。
代用品も、価格にかかわらず「素材に合うか」「生地を傷めない当て方ができるか」を基準に、慎重に判断しましょう。
毛玉を増やさない予防法と、洗濯表示の読み方
毛玉は、取ってもまたできます。東京都クリーニング生活衛生同業組合は、毛玉取り器でむやみに刈り取ると、衣服の繊維そのものを刈り取ることになり、衣服の寿命を縮めるとして、毛玉ができないようにする日頃のケアを勧めています。
予防として挙げられているのは次の3点です。
- 着用後に洋服ブラシで毛羽の絡みを整える
- 洗濯ではネットを使う、裏返して短時間で洗う
- ドライクリーニングを利用する
全国クリーニング生活衛生同業組合連合会は、セーターなどのニット類について、ハンガーに掛けたまま長期間保管すると重みで形が崩れることもあるため、なるべくたたんで保管するよう案内しています。
洗濯表示は「その処理まで」という上限情報
洗濯表示は、日本産業規格『JIS L 0001』に基づきます。消費者庁によると、回復不可能な損傷を起こさない最も厳しい処理を示すもので、洗濯・漂白・乾燥・アイロン仕上げ・商業クリーニングの5つの基本記号と、それに組み合わせる付加記号で構成されます。
- 下線1本は「弱い処理」、2本は「非常に弱い処理」
- ×印は、その処理ができないこと
- 5つの基本記号のうち記載のないものがある場合、その記号が意味する処理はすべてできるとされる
日本規格協会によると、『JIS L 0001』は2024年8月20日に改正版が発行され、液温30℃を上限とする手洗い記号などが追加されました。
衣類によっては、2016年11月30日までに表示された旧記号や、2016年12月1日〜2024年8月19日に表示された記号がついていることもあります。表示の時期ごとの記号の意味は、消費者庁の資料でご確認ください。
取りきれないとき・高価な衣類のときは、無理せず専門店へ
次の場合は、自分で毛玉を取る前に、取扱表示を確認し、クリーニング店などに相談するのがおすすめです。
- カシミアやモヘアなど、毛足が長く風合いが大切な高価な衣類
- 生地が薄くなっている、ほつれている、縫い目や刺繍の部分
- 毛玉取りで穴があくのが心配なとき
毛玉は取るたびに生地が薄くなりますから、「ここまで」と決めておくことも長く着るコツです。相談できる内容や費用は店舗で異なりますので、事前にお問い合わせください。
まとめ
- 毛玉は摩擦で繊維の先端が引き出され、絡み合ってできる
- 平らな場所で、軽く、少しずつ。手でむしらない
- 電動タイプは説明書の「使えないもの」を確認する
- 刃物は怪我と衣類破損のリスクがある
- 予防は、ブラッシング、洗濯ネットや裏返し洗い、ニット類はたたんでの保管
お手元のニットの素材と洗濯表示を確認して、無理のない範囲から試してみてはいかがでしょうか。
ご利用にあたっての注意
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の商品・サービス・業者の購入や契約を推奨・勧誘するものではありません。記載の内容は2026年時点で確認できた公開情報にもとづく目安であり、衣類の素材・状態や道具によって結果は異なります。高価な衣類や判断に迷う衣類は、取扱表示の確認、またはクリーニング店などの専門家へご相談のうえ、ご自身の判断で行ってください。刃物や電動機器は、各製品の使用上の注意をよくお読みください。
参考情報
元新聞記者。ガーデニング、インテリア、植物、DIYなどの記事を執筆。華道(池坊 師範科助教・華掌)、フラワーアレンジメントにのべ10年間励み、専門的視点から解説する。一種外務員資格、行政書士試験合格。
1000本以上の記事を書いてきて感じるのは、毛玉取りのような身近なテーマこそ、「やってはいけないこと」を知っておく価値が大きいということです。便利そうな道具や方法はたくさんありますが、衣類は素材や仕立てによって傷み方が違います。そのため今回の記事では、道具の紹介に偏らず、毛玉ができる仕組みと注意点を、公的機関や業界団体、メーカーの説明書で確認できた範囲で整理しました。
毛玉は、摩擦で繊維の先端が引き出されて絡み合ってできます。取るときは平らな場所で軽く当てて、取りすぎないことが大切です。電動タイプについては、特定のメーカーの説明書に基づく注意としてご紹介しており、すべての製品に当てはまるわけではありません。カミソリなどの刃物や、身近なもので代用する方法は、公式の資料で確認できなかったため、怪我と衣類破損のリスクがある点だけをお伝えしています。
予防の面では、洗濯表示の読み方も整理しました。表示は、その処理まで行えるという上限の情報です。ご自宅で扱うのが不安な衣類や、毛玉が取りきれないとき、高価な衣類のときは、無理をせず専門店に相談することも検討してみてください。大切な一着を長く着るために、できる範囲から取り入れていただければうれしいです。