この記事はここがポイント
- お墓の承継問題が急増中。無計画な墓じまいは危険
- ラブル回避には現状把握と家族の話し合いが必須
- 墓じまいだけでなく改葬など前向きな選択肢を検討
9月20日から秋のお彼岸に入ります。このタイミングで実家へ帰省したり、お墓参りの予定を立てている方も多いのではないでしょうか。
お墓の前で静かに手を合わせながら、「親が亡くなったら、このお墓は誰が継ぐのだろう?」「遠方に住む自分たちきょうだいで、これからも管理し続けていけるだろうか?」と漠然とした不安や心配が頭をよぎることはありませんか。
だからといって、焦って「早く墓じまいをしなければ」と無計画に動くのは危険です。
お墓をどう維持・移行していくかという「承継問題」の現実と、家族での適切な向き合い方を整理することから始めてみましょう。
なぜ今、お墓の「承継問題」が急増しているのか?
お墓の管理や引き継ぎに悩むご家庭が増えている背景には、少子化や核家族化、子ども世代の都市部への移住など、社会全体のライフスタイルの変化が深く関係しています。
かつてのように「長男や一族が代々受け継ぐのが当たり前」という価値観から、「子どもや後継者に管理の負担をかけたくない」と考え方や意識が変化してきました。
株式会社鎌倉新書「【第17回】お墓の消費者全国実態調査(2026年)」によると、お墓を購入・検討する際に「継承者不要であること」を重視する人が38.8%に達しており、樹木葬(47.4%)や合祀墓・合葬墓(16.4%)といった後継者を必要としない形態が選ばれる傾向が強まっています。
また、墓守をする人がおらず放置されてしまう「無縁墓(無縁墳墓)」の増加は全国的な社会問題となっています。
総務省行政評価局「墓地行政に関する調査」によると、公営墓地や納骨堂を有する自治体のうち58.2%で無縁墳墓が発生(疑い含む)しており、人口30万人以上の都市部自治体においては78.9%にのぼります。
「無計画な墓じまい」で後悔しないための3つのステップ
無計画に墓じまいを始める前に…
将来への不安から思いつきで処分手続きを進めてしまうと、親族トラブルやお寺との摩擦を生む原因になります。まずは以下の3つのステップで、段階的に準備を進めることが大切です。
ステップ①:現状の把握(誰が名義人で、どこにあるのか)
実家のお墓の正確な所在地をはじめ、管理事務所や菩提寺の連絡先、現在のお墓の名義人(祭祀承継者)が誰になっているかをきちんと確認・把握しましょう。
ステップ②:家族・親族との「腹を割った話し合い」
お墓に関するトラブルで最も多いのが、きょうだいや親戚間での意見の食い違いです。「誰が管理していくのか」という役割分担はもちろんのこと、将来お墓の形を変える場合の「費用負担(解体・移設工事などの費用を誰がどう出すか)」についても、タブー視せずに前もって話し合っておくことがスムーズな合意形成の鍵となります。
ステップ③:菩提寺・霊園へ現状の不安を相談する
お寺に対して、いきなり「墓じまいや離壇をしたい」と切り出すと、高額な離壇料トラブルや感情的なこじれに発展するリスクがあります。
まずは日頃の感謝を伝えつつ、「遠方に住んでいて将来の管理に不安がある」といった現状や悩みを率直に相談し、信頼関係を保ちながら事前のコミュニケーションを重ねていきましょう。
お墓の承継問題に向き合う「前向きな選択肢」
お墓の継承問題に向き合ってみましょう
現状の維持が難しいと感じた場合、「今の区画を更地にして返還する(墓じまい)」という選択だけでなく、今の形を残す工夫も含め、家族のライフスタイルに合わせた前向きな選択肢を検討することができます。
選択肢A:お墓の引越し(改葬)
遠方にある実家のお墓をたたんだ上で、自分たちが現在暮らしている地域の近くへ遺骨を移す(改葬する)方法です。
お墓参りや日頃の手入れに通いやすい環境を整えることで、無理なく管理を継続できます。
選択肢B:承継者不要の供養形態への移行(樹木葬・合祀墓など)
将来的に管理する人がいなくなることが確定している場合は、実家のお墓を墓じまいし、樹木葬や合祀墓(合葬墓)など、最初から後継者を必要としない形態へ移行するのが現実的な手段です。
選択肢C:両家墓(りょうけぼ)の検討
一人っ子同士の結婚などで増えている、両家の遺骨をひとつのお墓にまとめて祀るスタイルです。
ただし、「両家のお墓をどちらもたたんで新しく建てる場合は二重の費用がかかる」「片方をたたんでもう片方にまとめる場合でも、霊園や寺院の規約で異姓(他家)の遺骨の埋葬が制限されていることがある」などハードルもあるため、事前の確認が必要です。
選択肢D:墓守の代行サービス活用
「お墓の場所も形も変えたくないけれど、遠方で頻繁にお手入れに行けない」という場合は、民間の清掃・献花代行サービスを活用して今のお墓を無理なく維持していく道もあります。
このお彼岸の週末、まずは「会話」から始めよう
今週末のお彼岸は、家族や親族が集まり「お墓のこれから」について話し始める絶好の機会です。「お墓のこと、今後どうしていこうか?」と優しく問いかけてみることからスタートしてみてはいかがでしょうか。
お墓の承継や改葬を考えることは、単なる処分や事務手続きではありません。これまでのご先祖様や家族の歴史に思いを馳せ、これからの家族同士の繋がり方をみんなで確認し合う、温かく前向きな機会となるはずです。
参考資料
校閲者出身の編集記者。人文社会系の一般書籍の校閲・社会科教材の制作を15年間経験。実体験から相続や介護について当事者目線で紐解くことを信条としている。証券外務員二種(二種外務員資格)・相続診断士・ガーデンコーディネーター資格を保有、早稲田大学卒。