この記事はここがポイント
- 収納は量でなく「配置」が重要、使う場所とモノを近づける「適材適所」の考え方
- 土間収納やパントリー等、用途と動線、収納物のサイズに合わせた配置計画
- 図面での動線、開閉、奥行き・高さの確認、将来変化を見据えた収納の可変性
収納はたくさんあるはずなのに、なぜかモノが片付かない——そんなお悩みを抱えていませんか。
実は、使いにくさの原因は収納の「量」ではなく「配置」にあることが少なくありません。どこに何をしまうかという設計段階の工夫次第で、同じ収納スペースでも使いやすさは大きく変わります。
そこで今回は、大手住宅メーカーで38年間勤務し、350棟を超える住まいづくりに携わった実務家である住宅のプロに、後悔しない収納配置の考え方と、土間収納・玄関収納など用途別の使い分け、図面段階でチェックしておきたいポイントを伺っていきます。
注文住宅の場合、基本的に自由設計ですから、設計提案に際してまず間取りの要望を伺います。すると、「とにかく収納をたくさん作って欲しい」とほとんどのお客様から要望があります。しかし実は、ただ単に収納がたくさんあれば片付く、と考えないことが大切だと感じています。
実際の暮らしを考えると、収納の「量」以上に重要なのが、「どこに」「何を」しまうかという配置です。たとえば、掃除機を使う場所から離れたところに収納してしまえば、毎回取りに行くことが負担になります。ゴルフ用品やベビーカーなども、玄関から離れた場所にしまうより、土間収納を設けたほうが使いやすいでしょう。
私が間取りを考える際に意識していたのは、「そのモノを使う場所」と「しまう場所」をできるだけ近づけることです。さらに、帰宅してから荷物を置く、買い物したものをしまう、着替える、洗濯するといった日常の行動を一つひとつイメージしながら、収納の位置を決めていきます。
家族が毎日どのように暮らし、どこで何を使うのか。そこまで考えて「適材適所」に配置することで、同じ収納量でも暮らしやすさは大きく変わります。
なぜ収納があっても「使いにくい家」になるのか
収納があっても片付かない家には、いくつかの典型的な原因があります。代表的なのは次のようなケースです。
- 収納が生活動線から離れていて、使う場所まで持ち運ぶのが面倒になる
- 奥行きや高さが、実際にしまいたいモノのサイズに合っていない
- 収納の「量」だけを増やし、「何をしまう場所か」を決めずに設計してしまう
国土交通省の「令和5年住生活総合調査」(令和7年8月公表の確報集計)でも、「広さや間取り」は住宅及び居住環境に関して重視する項目の中で最も高い割合(11.8%、子育て世帯では20.1%)を占めることが報告されています。
間取りの工夫次第で暮らしやすさが左右される度合いは大きいといえます。
収納配置の基本:「量」より「適材適所」
収納計画でまず押さえておきたいのが、「使う場所の近くに、使うモノをしまう」という適材適所の考え方です。
生活動線の近くに収納があるか
掃除道具は掃除をする場所の近く、外出用品は玄関の近くというように、使う場面をイメージしながら収納の位置を決めると、しまう・取り出すの手間が減ります。
来客を迎える玄関まわりでは、家族用の収納と来客用のスペースを分けたり、トイレなど見られたくない水まわりの位置が来客の視線に入らないよう動線を工夫したりすることも、使いやすさと見た目の両立につながります。
奥行き・高さが用途に合っているか
同じ「収納」でも、靴をしまう土間収納と、衣類をしまうクローゼットでは適した奥行きが異なります。
収納するモノのサイズを具体的に想定せずに設計すると、せっかくの収納スペースがデッドスペース化してしまうことがあります。
用途別に見る収納配置のポイント
玄関収納と土間収納の違い
玄関まわりの収納には、靴箱タイプの「玄関収納(シューズボックス)」と、土足のまま出し入れできる「土間収納(シューズクローク)」があります。
土間収納は、ベビーカーやアウトドア用品のように玄関収納には収まりにくい大きめのアイテムも、靴を脱がずにそのまま置けるのが特徴です。
間取りとしては大きく2パターンがあり、玄関ホールへ土間を通り抜けられるつくりにすると家族の生活動線としても使いやすくなり、通り抜けをなくして独立させると、その分収納スペースを広く確保しやすくなります。
土間収納は、出し入れのためのスペースも含めて1〜2畳程度の広さが必要になることが多いとされますが、敷地条件や置きたいものの量によって必要な広さは変わるため、あくまで目安として捉え、実際の打ち合わせで確認することをおすすめします。
2つのタイプの違いを整理すると、次のようになります。
ウォークスルータイプとウォークインタイプの違い
どちらのタイプが向いているかは、収納量と動線の利便性のどちらを優先したいかによって変わります。
私がよくお客様に提案し、引渡し後にもご満足いただいたのは、玄関まわりの収納です。
シューズクロークとは別に、玄関の三和土と同じ土間レベルで出入りできる「土間収納」を設けるプランです。これは、キッチンとの動線にもよりますが、食品庫として使うパントリーなどと連結すると、さらに使い勝手が向上します。買い物から帰宅して、食品や日用品をそのまま収納する動線としても重宝します。
LDK周りの収納(パントリー等)
キッチン・ダイニング周りでは、食品ストックや日用品のストックをしまう「パントリー」を設けるケースも増えています。
キッチンから近い位置に配置することで、買い物後の荷物を直接しまいやすくなり、キッチンのカウンターや床に食品のストックが積み重なることも防ぎやすくなります。
また、冷蔵庫では収まりきらない飲料のケースやお米、調理家電の予備など、使用頻度にばらつきのあるものをまとめて収納できる点もパントリーの特徴です。
キッチンとの位置関係だけでなく、玄関や勝手口からの動線とも近いと、買い物から収納までの移動がさらにスムーズになります。
図面段階でチェックしておきたいポイント
間取り図の時点で、次のような観点を確認しておくと、入居後の「しまいにくい」を防ぎやすくなります。
- 収納までの動線の長さ:よく使うモノの収納は、使う場所からの距離が短いか
- 扉の開閉スペース:開き戸・引き戸の可動範囲が、家具の配置や通路幅と干渉しないか
- 収納の奥行き・高さ:実際にしまいたいモノのサイズと合っているか
収納の広さの目安を、延床面積に対する割合(収納率)で考える方法もあります。
延床面積の1割前後を収納スペースに充てるとよいといわれることもありますが、確立した公的な基準があるわけではなく、家族構成や持ち物の量によって必要な収納量は大きく異なります。
数値はあくまで検討の出発点として捉え、実際の持ち物の量に基づいて具体的に確認することが大切です。
将来の変化を見据えた「可変性」という視点
子どもの成長や独立、親との同居開始など、家族構成はライフステージによって変化します。
現在の持ち物の量だけで収納を決めてしまうと、将来モノが増えたとき、あるいは減ったときに使いにくくなることがあります。
可動棚を採用して棚板の高さを調整できるようにしたり、将来的に間仕切りを変更できる余
白を残しておいたりすることで、ライフステージの変化にある程度対応しやすくなります。打ち合わせの際には、現在の荷物量だけでなく、数年後を見据えた収納量の変化についても相談してみるとよいでしょう。
収納を増やしすぎることで生じるデメリット
収納は多ければ多いほどよいとは限りません。収納スペースを増やしすぎると、次のようなデメリットが生じる場合があります。
- 居室(リビングや個室)の面積が圧迫される
- 収納が分散しすぎて、かえってどこに何をしまったか把握しにくくなる
- 使わない収納スペースが「とりあえず置き場」になり、結果的に片付かなくなる
収納計画は「量」を追求するのではなく、生活動線や持ち物の性質に合わせた「適材適所」の配置を優先することが、使いやすい家につながります。
まとめ
使いにくい収納の原因は、量の不足よりも「配置」にあることが少なくありません。
生活動線の近くに適したサイズの収納を設け、土間収納・玄関収納・パントリーなど用途ごとの特徴を踏まえて配置を検討することが大切です。
将来の変化も見据えながら、ご家庭の暮らし方に合った収納計画を考えてみてください。
「必要なものを必要な場所に、無理なくしまえる家」が使いやすい住まいにつながる
ご利用にあたっての注意
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の収納グッズ・リフォーム業者・住宅メーカーの購入や契約を推奨・勧誘するものではありません。記載の広さ・割合の目安は執筆時点の一般的な情報であり、実際に適した収納量や配置は敷地条件・家族構成・持ち物の量によって異なります。具体的な間取りの検討にあたっては、複数のハウスメーカー・設計事務所への相談のうえ、ご自身の判断で行ってください。
参考情報
株式会社モニクルリサーチが運営する経済メディア『LIMO』の住まい・暮らし領域『LIMO&ホーム』編集部。元金融機関出身者や元記者、専門資格保有者が住宅・お金・ガーデニングなどを解説する。
大手住宅メーカーで38年間勤務。350棟超の住まいづくりに立ち会い、国内の住宅営業・支店運営から、海外法人の経営、都市開発まで経験。住文化や住宅事情を知る実務家として、住まいを暮らしの視点から解説。
間取りを検討する際、収納計画ではその絶対量にこだわるケースがよくあり、「収納率」という言葉もあります。しかし、収納で後悔しないためには、「収納を増やす」という発想から一度離れてみることも必要です。
実際には、収納そのものが足りないのではなく、収納が使いにくいと感じている原因はいくつも考えられます。
「使う場所から遠い」が代表例ですが、他にも「奥行が深すぎて使いづらい」というケースがあります。収納効率の観点からは、面積よりも収納壁量が大切と言われており、奥行きの浅い棚は出し入れがしやすく、収納空間を有効に使える一方、ウオークインクロゼットなどは、人が歩いて入るための空間が必要になるため、その分は収納効率が低下します。
また、納戸やファミリークロゼットなど、「何を入れるか決めないまま作ってしまった」ケースもよくあります。収納が多いということは、モノをため込みやすくなると指摘されています。
余談ですが、モノをため込まないための「断捨離」は有効で、私が個人的に実践しているのは、アルバムや額入り賞状などの画像デジタル化です。思い出をすべて手放す必要はありませんが、少しの工夫でずいぶん収納容量を圧縮しています。
収納は、家が完成してから「ここに棚を置こう」と考えるより、間取りを決める段階で、家族の持ち物と日々の行動を具体的にイメージしておくことが大切です。
「収納の多い家」ではなく、「必要なものを必要な場所に、無理なくしまえる家」。これが、長く暮らしても片付けやすく、使いやすい住まいにつながると私は考えています。